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精神医療の歴史及び精神医学の概念について
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精神医療の歴史及び精神医学の概念について
1. はじめに
いうまでもなく、精神医療とは精神疾患を対象とした医療である。 精神疾患は、身体疾患と異なり原因が不明なものが多く明確な診断基準も存在しないため、時代とともにその解釈、治療法および処遇も変化してきている。精神疾患の発病と経過もまた、時代背景に左右されることが多いため、現代精神医学の概念ができあがるまでに、精神障害者がどの様に扱われてきたのかを理解することも重要である。以下に精神医療の歴史を述べるとともに、現代精神医学の概念について述べる。
2. 西洋の歴史
医学の父ともよばれているヒポクラテスの生きていたギリシャ時代において、精神疾患は身体的基盤をもつ疾患であると考えられており、医療の対象として瀉血といった身体療法や作業療法のようなものも行われていた。しかし、ローマ時代の独裁体制下、このような考え方はいつしかすたれていってしまった。
中世に至り、キリスト教が「精神病は病気ではなく悪魔の仕業、神の罰である」と解釈したために、精神障害は迫害の対象となってしまった。精神障害者は、悪魔や魔女として扱われ、監禁、拷問、処刑などが平然と行われていた。
ルネサンスを経て、わずかながら精神障害に対する科学的な理解が回復したものの、依然として医療の対象とはならなかった。その頃はじめて登場した「精神病院」も、僧院の経営による「精神障害者収容所」であり、実態は鎖に繋いで監禁しているにすぎなかった。 18世紀に至って、ようやく精神障害者は医師の手に委ねられることになったものの、監禁・収容主体の処遇に変化はなかった。
そして、フランス革命直後の1793年にパリのビセートル病院の院長ピネルが精神障害者を鎖から解放したことをきっかけとして、無拘束下での治療が行われるようになった。 ヨーロッパは道徳療法(一種のはたらきかけ)の黄金時代をむかえ、精神障害が医療の対象として正当に扱われるようになったかに見えた。
19世紀末にダーウィンが適者生存説を唱えたことで、「精神障害者は淘汰されるべき」との考え方が生まれた。さらに、ドイツの病理学者ウイルヒョウが「脳細胞は回復不能」という現象を発見したことも、この時代の社会防衛的機運に拍車をかけて、精神障害者に対して再び強制器具が使用されるようになった。
20世紀になってクレペリンやフロイトなどの精神医学者が現れ、精神分裂病と躁鬱病の概念や精神分析理論などが提唱された。電気けいれん療法やインスリンショック療法などといった身体療法も開発され、現代精神医学の基盤がつくられた。
時代が世界大戦へと流れていく中、再び精神障害者は迫害を受けることとなるが、終戦後に人間性の尊重が再認識され、精神障害者に対する人権擁護の考え方が初めて生まれることとなった。そして、1952年に導入された抗精神病薬クロルプロマジンが統合失調症患者の陽性症状のコントロールを容易にしたことで精神障害者の社会復帰の道が拓け、その後の精神医療の発達に大きな影響を及ぼした。
2. 現代精神医学の概念
現代の精神医学は、身体医学と並んで医学の二大分野の一つとして位置づけられている。人間は身体的な存在であるばかりでなく、心理的、社会的かつ実存的な存在であるため、精神医療においては、自然科学的手法のみならず人文化科学的手法もとられている。
精神障害者が訴える症状には身体症状と精神症状がある。精神症状には、観察者が知覚できる行動として現れる客観的症状もあるが、患者の訴えを介して間接的に判断せざるをえない主観的症状も存在す
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精神医療の歴史及び精神医学の概念について
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(1)精神医学の歴史について
?欧米における精神保健の歴史
古くギリシャ・ローマ時代には、精神障害とは、悪い魂、悪魔、先祖の霊などによる、超自然力の影響によるとされていた。また中世に入ってからも、キリスト教などの宗教的影響が強く、精神障害者は「悪魔につかれたもの」として非情な迫害を受けていた。
1793年パリのビセ一トル病院で、ピネルは「精神病者は罰せられるべきではなく、悩めるひとりの人間として、あらゆる看護を受けるべき権利をもつ」と主張した。彼は鎖につながれて罪人の処遇を受けていた人々を病める人間とみなして、手足の鎖から解放したのである。このときフランス革命の自由・平等・友愛の精神が、時代の精神としてその底流にあったことも、大きな影響を与えていた。
精神医学という言葉は1808年フランスのこのピネルによってはじめて用いられ、精神病者の対応に画期的な改革をもたらした。
この精神障害者に対する本格的な医療が行われた18世紀後半を、精神医療の源と考えてもよいだろう。
その後ピネルの考えは、門下生のエスキロールによって受け継がれ、ヨーロッパ全土に広がっていった。
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精神医療の歴史及び精神医学の概念
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精神医療の歴史とは、精神障害者を対象とした治療に関する変遷であるが、同時に精神障害をもつ人々の処遇の歴史であり、精神障害に対する社会の見方の時代的移り変わりでもある。以下、西洋と日本の精神医療歴史を例に述べることとする。
1-1.西洋の歴史
(1)ギリシャ・ローマ時代
神話・伝説によると、太古の昔から精神病患者は存在していたと考えられるが、病人とはみなされず、悪霊が憑いているなどと言われ、残虐な手段や宗教的儀式が行われていた。
しかしギリシャ・ローマ時代になると、ヒポクラテスが狂気に生理学的な解釈を加え、医学的な基礎づけを行った。またガレノスは精神のありかは「脳」にあると結論づけている。一方、アスクレピアスは治療における心理的側面を重視し、今日の作業療法にあたることを行ったと伝えられている。
(2)中世
キリスト教の影響下で、精神障害は宗教的な理解の対象となり、鬼神論が再燃し、精神障害者にとっては、「中世の暗黒時代」になり、宗教的拷問や刑法上の犯罪者として終身拘束された。しかし14世紀のルネサンスの人道主義によって、わずかながらも科学的理解が回復し、僧院などに収容所が設けられた。
15世紀に、はスペイン・イギリスに精神病収容所が作られ、大規模な病院らしい施設は1751年ロンドンに建てられた聖ルカ癲狂院であるが、これらの施設は患者を監禁しておく場所で、悲惨を極めた状態であった。こうした時代状況の中で、ドイツのヨハン=ワイヤーは、精神疾患と悪魔の関係を否定した。
(3)近古
18世紀末のフランス革命直後に、パリのビセートル病院長であるピネルが患者を鎖から解放し、病める人間として扱った。これは、ヨーロッパ各地に広がり、イギリスでは19世紀前半にテュークがヨーク療養所を設立し、精神障害者の人間性の尊重・自由・労働を強調して道徳療法を始めた。また、コノリーが精神障害者に対し無拘束の原則を確立した。
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