資料:2件
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「恥」で探る古代中国刑罰論
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序
近代以前の刑罰史といえば、多くの人は中世ヨーロッパの残虐な歴史を思い浮かべるのではないだろうか。世の中には、中世ヨーロッパの残虐刑を題材にした書物が数多く出版され、また魔女裁判といった怪しい類はよく知るところである。現代人は、火あぶりの刑、四つ裂きの刑、拷問椅子など、目を覆いたくなるような惨状が書き綴られた書物から、被刑者の悲惨な叫びと当時の人々の非情さ・冷酷さを感じとり、自らの欲求を満足させるのかもしれない。この点は、童話の残虐性を題材にした本が話題になった(1)ことについても当てはまり、我々の中に残虐性を欲する何かがあるのは確かである。
西洋に限らず、中国の史書においても常軌を脱した異常な残虐行為が随所に登場する。しかし、それらの行為は狂気した一部の諸侯などが私刑として行ったものであり、そういった残虐性が法律に反映されておらず、残虐な行為を行ったものに対しても、応酬を意図して特別に残酷な刑罰が行われたわけでは決してなかった(2)。ただし明・清の刑には、皮剥ぎの刑、頭さんとう(穴埋めにした後に頭を削り取る刑)、凌遅処死りょうちしょし(身体の一部を段階的に切断していき時間をかけて殺す極刑)といった極めて残酷な刑が確かに存在する。しかしながら、「それらの刑罰は、秦漢時代から存在し引き継がれてきたものではなく、十世紀以降、初めて姿を表した刑であり、唐代までの刑罰には見えない」(3)のである。近世中国に見られるこの現象は、多分に征服異民族の影響を受けたものであり、近世ヨーロッパでは次第に残酷刑から脱却していくなかで、残酷刑の受容という逆行現象と言えるものである(4)。
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