連関資料 :: 万葉人の恋の呪術

資料:2件

  • 万葉呪術 完成版
  • 序章  万葉集相聞歌の一角を築く特徴的な歌群に、呪術やまじないを詠みいれた歌がある。恋する男女にとって相手と離れることは悲しい。けれども、人目や母親などの関与があってそう簡単に逢えるわけのものでもないので苦しい。しかし、それも相思相愛の場合はまだいい。まだ見ぬ人や人目見ただけの人を思ったり、相手の愛がいつしか薄れていったりする片想いの恋の場合は何ともするすべがない。社会のさまざまな障害や、片想いによってこうしてもがきあがかねばならなかった男女が、藁をも掴む気持ちで一喜一憂してつい頼ったもの、あるいは頼ろうとしたもの、それが呪術であった。万葉人の呪術は千差万別であるが、最も強制的・意図的な呪術はト占(ぼくせん)(うらない)であり、消極的な呪術としては前兆を含めた呪術の行為がある。  万葉集の表記は必ずしも原作者のものではないが、「恋」を表わすのに「孤悲」を用いている歌が約三十首あり、万葉人にとって、恋とは好きな人と離れて孤独に悲しむことが恋であった。そのような悲しみをすこしでもやわらげようとして行ったものが、呪術だったのではないのだろうか。  しかし、呪術には効果がないことを意味する歌も多いことを忘れてはいけない。万葉人は呪術の成果にしばしば疑問を持っていたのである。もしかすると呪術の全能性の信仰から、すでに解放されていたのではないのだろうか。  私は二四〇八番の歌に「眉根掻き」「鼻ひ」「紐解き」という呪術的な行為が三種詠み込まれていることに注目し、この歌をもとに万葉人の呪術的な信仰、特に恋の呪術に対する考えについて考察した。  第一章では、「紐」の持つ呪力性や、結ぶという行為に込められた想いについて見ていき、「紐結び」という儀式が行われた背景や、その行為が多く行われたであろう旅の際になされた呪術をあげていった。
  • 論文 人文・文学 古代文学 万葉集 呪術 前兆
  • 990 販売中 2005/12/22
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