資料:4件
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法人の人権〜八幡製鉄政治献金事件判決〜
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1.法人は人権の享有主体になりうるか
団体である法人も人権の享有主体たりうると考える。憲法の「基本的人権」の概念が、人間の尊厳を理念するものとして、もともとは、自然人を念頭に置いたものであることは疑いない。近代人権宣言は、団体に対しては、むしろ敵対的ですらあった。しかし、今日の社会では、団体の存在を無視して個人の生活を語ることはできない。もちろん、これらの団体の行動は自然人を通じてなされるものであり、また、その利益は究極的には構成員たる自然人に帰するものであるが、しかし、個々の自然人の行動や利益に分解しきれない団体としての行動や利益というものを問題にする実益は十分にあるというべきである。そして、また、団体としての活動の自由は、憲法21条が保障する結社の自由の内容をなすものでもある。こうしたところから、日本国憲法の解釈としても、団体・法人の人権享有主体性を認めるのが、通説および判例の立場である。八幡製鉄政治献金事件で最高裁は、「憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきである」と判示している。
2.会社は、自然人たる国民と同様に、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対する等の政治的行為をなす自由を有するか。
人権は、個人の権利として生成し発展してきたものであるから、それを法人に認めるといっても、限定的に解することが必要である。自然人とだけ結合して考えられる人権である、選挙権や生存権、一定の人身の自由などは法人には保障されない。
最高裁は、八幡製鉄政治献金事件で、「会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。」と判示し特別の制約を認めなかった。
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法人の目的の範囲(八幡製鉄政治献金事件)
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本件で主に争点となったのは以下の3つである。まず、目的の範囲(43条)とは何の範囲を定めたものなのか、言い換えると、何を制限したものなのかということである。次に、「目的の範囲」という文言の中の「目的」の意味についてである。さらに、政治献金は会社の目的の範囲内であるかということである。
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八幡製鉄政治献金事件判決と南九州税理士会事件判決を読み比べて
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1 八幡製鉄政治献金事件(以下、八幡製鉄事件)と南九州税理士会事件において、まず共通して争点となっているのが、「法人の目的の範囲内の行為」がどこまで許されるか、ということであり、特に政治資金規正法上の政治団体への寄付行為が含まれるかが争われた。
これらのうち、まずは法人の目的の範囲について比較検討を進めていきたい。
八幡製鉄事件判決理由において、民法43条にいう「目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに含有されるものと解する」のを相当としている。そして、「必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であったかどうかをもってこれを決定すべきでなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断され」なければならないと、過去の判例を引用して述べている。
次に同判決理由は、会社について、地域社会の構成単位として自然人と等しく存在する、いわゆる法人の社会的実在説を採用した上で、営利法人である会社の活動重点が定款所定の目的を達成するうえに直接必要な行為だけでなく、一見定款所定の目的と関わりの無い行為であっても、社会通念上期待ないし要請されるような、例えば地域社会への奉仕や寄付行為なども、会社の当然になしうる行為であるとしている。
これらのことから、右判例は法人たる会社の社会的存在意義を重視し、民法43条の定款の目的の範囲を広く判断していると考えられる。
一方、南九州税理士会事件のおける判決理由も、民法上の法人のうち、特に会社については、民法43条の定款の目的の範囲を八幡製鉄政治献金事件判決と同様に判断してはいる。
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