法と権力の法哲学的アプローチ
本稿では、法は権力や暴力との関係でいかなる存在意義があり、いかなる役割を果たしうるかを考えていきたい。
かかる関心をテーマに設定した理由は、私たちの身の回りを見渡した時、法は本当に権力や暴力を馴致しているのか、むしろ権力による法の恣意的運用の危険性の方が大きいのではないか、という疑念を常々持っていたからである。例えば、刑事訴訟法の訴追判断(起訴便宜主義)である。私はこの起訴便宜主義の名の下、権力の側は法を厳格に適用する権限を留保することで、国民に対して強い圧力を働かせていると感じていた。具体例としては、一連のオウム真理教事件の際、信者を何とかして逮捕せしめん...