本レポートでは、ローマ法がヨーロッパ法を通して日本に与えた影響について具体例をあげて論じる。
ローマ法は、ヨーロッパやその他の地域における近代的大陸法制度の多くがローマ法の多大な影響を与えている。ローマ法がイギリスの法制度に与えた影響は、ヨーロッパ大陸の法制度に与えた影響と比較すれば、かなり小さなものではあるが、それでも、イギリスや北アメリカのコモン・ローは、ローマ法から継受したものがみられる。日本では、戦前はローマ法の履修が重要視されていたが、戦後はそのような傾向はなくなった。もっとも、契約締結上の過失は不法行為責任として裁判例でも認められており、また、合意は守られるべしとの原則も明文の規定はないが、解除には帰責事由がなければ許されないとの解釈の下に定説として認められており、日本法にも少なからぬ影響を及ぼしている。
1 まず、契約締結上の過失についてであるが、ローマ法において、所有権移転は、自然法または市民法により処分される。所有権移転にマンキパティオを要しない物は、有体物であり引渡、受領されるなら、完全な法権利で他人に移転できる。したがって、所有者から何らかの原因に基づき引渡しを...