本レポートでは、契約の概念の変遷について述べる。
ヨーロッパ大陸における契約というものの考え方の発展には、連続性・一体性があり、契約という概念は返還を遂げていっている。契約というものの考え方として、例えば古代ギリシアには、双務契約sunall’agmaがあり、古代ローマにはコントラクトゥスがあり、ドイツにはフェアトラークVertragがあるが、これを日本語訳ですべて「契約」という言葉に置き換えると、それぞれの違いはなくなってしまう。そこで、「契約」という名辞で表現される概念の意味内容が問題となる。
では、ローマ法における契約の概念とは何か。コーイングによれば、古代ローマ法は、初めは「一般的な契約」の思想を採らず、何百年にもわたり契約を特定のタイプと形式に対して与える訴訟という形で発展させた。ガーイウスは、これを要物契約・言語契約・文書契約・諾成契約の四つにまとめている。そして、これらのいずれかにあてはまる契約だけが訴えを提起でき、あてはまらない合意については、当事者が給付物の返還請求する可能性は認められているが、履行の訴えや賠償の訴えはく、訴えを提起するためにはその他の物や事が付け加...