「教会は、ローマ法の純粋な合意主義を利用した」(教科書32ページ)という教科書の記述の意味と、現代の日本法と教会法の異同について検討する。
1まず、「教会は、ローマ法の純粋な合意主義を利用した」という記述の意味を検討する。
(1) ローマ法ではどうすれば婚姻が成立するか。
まず、ローマ法において婚姻は、男性と女性の結びつきであり、一生涯の共同生活であり、人の法及び神の法による共同体であり、ウルピアーヌスによると、婚姻を成立させるのは合体ではなく合意であるとした。また、婚姻も結婚も、分離されえない共同生活を継続する夫と妻の結びつきであるといえ、家長権との関係や身分・嫁資・相続が問題になることもあったが、結婚の解消や再婚も禁じられていない。
(2) グレゴリウス9世教皇令集のどこにどういう形でローマ法の影響があるか。
キリスト教においては、婚姻はサクラメント(秘蹟)の一つであり、キリスト教は婚姻以外の男女の結びつきを認めようとしなかったから、男女が二人きりでいれば、結婚したものとみなされた。これは、肉体の結びつきが容易に法的な共同体として婚姻を成立させていた。聖書や福音書には、「神が結...