民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」と定めている夫婦同氏の原則であるが、外国では別氏を認める法律があり、同氏を法律で強制する国は日本だけであり、しばしば選択的夫婦別氏制を求めて訴訟がなされる。
私法の基本法である「民法」と、公法の基本法である「憲法」は通常区別されるものだが、夫婦の氏を定めなければ婚姻届けが受理されないなど家族への国家の介入があるため、憲法上問題が生じる。
1 夫婦同氏性が憲法上の権利として保障される人格権の一内容である「氏の変更を強制されない自由」を侵害し、憲法13条に違反しないか。
判例(最高裁・平成27年12月16日)では、「氏名は、社会的にみれば個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時にその個人から見れば、人が個人として尊重される基礎であり、個人の人格の象徴であり人格権の一内容を構成するものというべきである。」
他方で、氏は婚姻及び「家族法」制度の一部として法律が具体的な内容を規律しているもので、法制度をもって初めて具体的に捉えられるものであり、民法の規定では「社会の構成要素である家族の呼称として...