1.目的
光エレクトロニクスは光学と電子工学の境界領域に生まれた新しい工学分野で、その進展は目覚ましい。光エレクトロニクスの急速な発展はレーザと光ファイバの発明によるところが大きい。レーザ光は、自然光に比べ、高出力で単色性・可干渉性・指向性に優れている。光ファイバは比較的僅かな減衰量で長距離伝搬させることができる。本実験では光エレクトロニクスの基礎を習得すると共に、新しい学問分野の一端に触れることを目的とする。
2.原理
2.1 レーザの原理
レーザは原子・分子(量子)と電磁波との相互作用を利用している(量子エレクトロニクス)。原子(分子)系の有する内部エネルギーの定常状態のうち、2つのエネルギー準位1および2、つまりE1、E2(E1<E2)のみを考えるとすると、原子(分子)系と電磁波との相互作用はBohrの条件
に従う周波数νの電磁波(光)の自然放出、吸収および誘導放出の3つの過程を通して行われる。これら3つの過程のうち、レーザ動作と特に重要な関係を持つのは誘導放出である。
もう1つレーザ動作にとって重要な現象は、反転分布である。2つのエネルギー準位E1、E2における原子数をそれぞれN1、N2とする。温度T(>0)で熱平衡状態にある系はBoltzmann分布をしており、常にN2<N1である。この場合では輻射は吸収でしか観測されない。それに対し、電子衝突、化学反応、光励起などの何らかの方法で上の準位の原子数を増やすか、または下の準位の原子数を減じてやればN2>N1の状態、すなわち反転分布が達成される。
反転分布が達成された状態で、二準位間に共鳴する電磁波が入射すると、誘導放射される光子の数が吸収される光子の数よりも多くなり、入射光が同じ周波数、同じ位相で増幅される。このような増幅機能を有するレーザ媒質を、対向する2枚の反射鏡で構成された光共振器内に置くとレーザができる。実際、光共振器内で、光は2つの反射鏡を往復し、レーザ媒質を通過する毎に誘導放出で増幅される。もし、誘導放出による利得が系全体の損失を上回れば定常発振状態、すなわちレーザ発振が起こる。
2.2 He-Neレーザ
HeとNeレーザは、最も初期に開発されたレーザであるが、現在でもなお広く使用されている。レーザ発振は、Neの遷移によるものであり、Heはエネルギー移乗用の準安定状態を有する励起原子として使われている。放電により、Heは電子と衝突して準安定状態23sおよび21s準位に励起される。この準位はNeの3sおよび3s準位に極めて近い
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ためNeとの衝突によって効率よくエネルギーが伝達され、Neの2s、3s準位に励起される。Neでは2pから1sへの強い遷移があるので2p準位の寿命は短い。2s準位の寿命が約0.1μsであるのに対して、2pの寿命は0.01μsと言われている。この結果2sと2pの間に反転分布が達成されて2s→2p遷移による1.153μm近赤外光がレーザ発振する。同様にして3s→2p遷移の632.8nm、3s→3p遷移の3.39μmもレーザ発振する。これらの中から特定の発信線を得るには、共振器長を波長の整数倍に正確に合わせてやる必要がある。また、1s準位の原子はすみやかに基底準位に戻す必要があるのでレーザを細くして管壁との衝突を起こさせてエネルギーを消滅させる。
2.3 レーザ光の性質
レーザは原子(分子)のエネルギー準位間の誘導放出による輻射によっており、優れ た性質を持つ。レーザ光源の出す光は、種類、波長により高出力(GW級)の
1.目的
光エレクトロニクスは光学と電子工学の境界領域に生まれた新しい工学分野で、その進展は目覚ましい。光エレクトロニクスの急速な発展はレーザと光ファイバの発明によるところが大きい。レーザ光は、自然光に比べ、高出力で単色性・可干渉性・指向性に優れている。光ファイバは比較的僅かな減衰量で長距離伝搬させることができる。本実験では光エレクトロニクスの基礎を習得すると共に、新しい学問分野の一端に触れることを目的とする。
2.原理
2.1 レーザの原理
レーザは原子・分子(量子)と電磁波との相互作用を利用している(量子エレクトロニクス)。原子(分子)系の有する内部エネルギーの定常状態のうち、2つのエネルギー準位1および2、つまりE1、E2(E1<E2)のみを考えるとすると、原子(分子)系と電磁波との相互作用はBohrの条件
に従う周波数νの電磁波(光)の自然放出、吸収および誘導放出の3つの過程を通して行われる。これら3つの過程のうち、レーザ動作と特に重要な関係を持つのは誘導放出である。
もう1つレーザ動作にとって重要な現象は、反転分布である。2つのエネルギー準位E1、E...