大同での緑化協力 地球環境林

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    大同での緑化協力
    地球環境林
     山地・丘陵地にグリーンベルトをつくり、水土流失を防ぐという、環境保全の見地からするとGENの緑化協力ではもっともわかりやすい基本のプロジェクトです。  植えるのは、3種類のマツを中心に、灌木を混ぜます。現在、造林に使う樹種を増やそうと、この地域に自生する広葉樹の育苗と試験栽培をおこなっています。
     モンゴリマツ(樟子松 Pinus sylvestris Linn. var. mongolica Litv.)、アブラマツ(油松 P. tabulaeformis Carr.)などは、1haに3,300本(場合によっては1,650本)植えます。植えるのはおもに3~4年生、30cmぐらいの苗木です。以前は10~15cmほどの2年生の苗木を植えていましたが、ウサギにかじり切られるケースが増えて、それを防ぐために少し大きな苗木を植えるようになりました。アブラマツは地元の樹種で、樹齢数百年の大木を道教の霊山、恒山で見ることができます。モンゴリマツは大興安嶺原産で寒さと乾燥に強く、まっすぐな樹型で用材に適すると歓迎され、さかんに植えられています。最初の5年ほどは伸びが遅く、GENが初期に植えたものがようやく人の背丈を追い越すほどに育ってきました。これからは、毎年30~40cmの勢いで伸びていくので、成長が楽しみです。
     1,500m以上の山地では、カホクカラマツ(華北落葉松 Larix principisrupprechtii Mayr.)がよく育ちます。標高が高いほうが、温度が低い分水分の蒸発がおさえられ、霧もあるため、低温に耐えられる植物には有利な環境かもしれません。
     温度の上昇という点では、山の南面も植物の生育には困難な条件をそなえています。寒い地方で温度が上がるのが不利というのは不思議に思われるかもしれませんが、鍵はあくまでも水です。温度が上がると水分の蒸発量がふえ、乾燥がすすむのです。また、春先に植物がまだ凍っているとき、長時間直射日光に照らされると細胞が破壊され、枯れてしまいます。その結果、左の写真のように、北向きの斜面には森林が成立するのですが、南面に育つ樹種はほとんどありません。GENの霊丘自然植物園では、南面にトネリコのなかまの灌木が育っているので、他の場所でも試してみることにしています。
     マツの植樹には、新しく導入した工夫がいくつかあります。ひとつは、菌根菌です。キノコの仲間で、植物の根と共生し、糖のかたちで植物から栄養をもらういっぽう、植物が水やミネラルを吸収するのを助けます。97年春に、関西総合環境センター生物環境研究所長の小川眞さんの指導で菌根菌を接種したマツの育苗実験をおこない、短期間で好成績をおさめました(写真右が菌根菌を接種したもの。左が接種しないもの。接種後3か月)。
     接種というとむずかしそうですが、方法は簡単です。苗木と同じ種類の木の林(菌根菌は樹種によってつく種類が違います。モンゴリマツの場合はアミタケ)に生えているキノコを集め、水で洗います。胞子をふくんだその水を苗にかけてやるだけ。また、林の表土をとってきて苗畑の土に混ぜる方法もあります。
     98年からは本格的にマツの育苗に導入し、2000年からは、菌根菌をつかって育苗した苗を植樹につかっています。01年の旱魃では、さすがに活着率が大きく低下したのですが、マツの植林には安定した結果をだしている大同県のなかでも特に成績の良い采涼山では、75%の活着率をキープし、私たちも、外部からの視察団も本当に驚きました。菌根菌のはたした役割も大きかっ

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    大同での緑化協力
    地球環境林
     山地・丘陵地にグリーンベルトをつくり、水土流失を防ぐという、環境保全の見地からするとGENの緑化協力ではもっともわかりやすい基本のプロジェクトです。  植えるのは、3種類のマツを中心に、灌木を混ぜます。現在、造林に使う樹種を増やそうと、この地域に自生する広葉樹の育苗と試験栽培をおこなっています。
     モンゴリマツ(樟子松 Pinus sylvestris Linn. var. mongolica Litv.)、アブラマツ(油松 P. tabulaeformis Carr.)などは、1haに3,300本(場合によっては1,650本)植えます。植えるのはおもに3~4年生、30cmぐらいの苗木です。以前は10~15cmほどの2年生の苗木を植えていましたが、ウサギにかじり切られるケースが増えて、それを防ぐために少し大きな苗木を植えるようになりました。アブラマツは地元の樹種で、樹齢数百年の大木を道教の霊山、恒山で見ることができます。モンゴリマツは大興安嶺原産で寒さと乾燥に強く、まっすぐな樹型で用材に適すると歓迎され、さかんに植えられています。最初の5年ほどは伸びが遅く、GENが初期に植えたものがようやく人の背丈を追い越すほどに育ってきました。これからは、毎年30~40cmの勢いで伸びていくので、成長が楽しみです。
     1,500m以上の山地では、カホクカラマツ(華北落葉松 Larix principisrupprechtii Mayr.)がよく育ちます。標高が高いほうが、温度が低い分水分の蒸発がおさえられ、霧もあるため、低温に耐えられる植物には有利な環境かもしれません。
     温度の上昇という点では、山の南面も植物の生育には困難な条件をそなえています。寒い地方で温度が上がるのが不利というのは不思議に思われるかもしれませんが、鍵はあくまでも水です。温度が上がると水分の蒸発量がふえ、乾燥がすすむのです。また、春先に植物がまだ凍っているとき、長時間直射日光に照らされると細胞が破壊され、枯れてしまいます。その結果、左の写真のように、北向きの斜面には森林が成立するのですが、南面に育つ樹種はほとんどありません。GENの霊丘自然植物園では、南面にトネリコのなかまの灌木が育っているので、他の場所でも試してみることにしています。
     マツの植樹には、新しく導入した工夫がいくつかあります。ひとつは、菌根菌です。キノコの仲間で、植物の根と共生し、糖のかたちで植物から栄養をもらういっぽう、植物が水やミネラルを吸収するのを助けます。97年春に、関西総合環境センター生物環境研究所長の小川眞さんの指導で菌根菌を接種したマツの育苗実験をおこない、短期間で好成績をおさめました(写真右が菌根菌を接種したもの。左が接種しないもの。接種後3か月)。
     接種というとむずかしそうですが、方法は簡単です。苗木と同じ種類の木の林(菌根菌は樹種によってつく種類が違います。モンゴリマツの場合はアミタケ)に生えているキノコを集め、水で洗います。胞子をふくんだその水を苗にかけてやるだけ。また、林の表土をとってきて苗畑の土に混ぜる方法もあります。
     98年からは本格的にマツの育苗に導入し、2000年からは、菌根菌をつかって育苗した苗を植樹につかっています。01年の旱魃では、さすがに活着率が大きく低下したのですが、マツの植林には安定した結果をだしている大同県のなかでも特に成績の良い采涼山では、75%の活着率をキープし、私たちも、外部からの視察団も本当に驚きました。菌根菌のはたした役割も大きかったのだと思います。
     GENがつかうマツ苗は白登苗圃で育てていますが、白登苗圃ができる前は大同県国営苗圃の一画を借りて育てていました。菌根菌を利用した育苗は、GENが国営苗圃ではじめたのです。その苗をみたバイヤーは、「値段が高くてもいいからこの苗がほしい」と言い、それを聞いた国営苗圃の技術者たちは、菌根菌利用の育苗を国営苗圃全体に導入しました。  GENのプロジェクトで植える本数は、この地域での国家プロジェクトで植えられる数にくらべると小さなものです。けれど、GENが導入した菌根菌利用の育苗が、国家プロジェクト用の苗圃にひろまったことの意義ははかりしれません。
     もうひとつは、植樹の方法です。粒子の細かい黄土にたっぷり水をふくませてぎゅっと踏み固めて植える地元の方法は、「水を逃がさない」ことのみを念頭においていました。これでは、日干しレンガに木を植えるようなもので根が窒息してしまいます。根にも酸素が必要ですから、通気性を確保するために砂や軽石などを混ぜ、踏み固めないで植えるように、立花吉茂代表をはじめとする日本の専門家は助言しました。現地の技術者は水が不足することを恐れて頑強にこばんでいましたが、対照実験の結果は明らかでした。スコップ一杯の石炭ガラを植え穴に入れたアンズは、活着率においてそうでない方を30%も上回り、生育もよく、掘り起こしてみると、根の発育も文句なしにいいのです。いまでは、植え穴にかならず通気性材料を加えるようになりました。
     さらに、混植を本格的に導入したのもGENの協力プロジェクトが最初です。単一樹種の一斉造林は病虫害に弱いので混植をするように、というのも日本の専門家の助言でしたが、現地の技術者はなかなか受け入れようとしません。「複数の樹種を植えると、太陽光線、水、肥料を互いに奪い合う」などといって、引き延ばすのです。けれど、97年、国家プロジェクトでマツの枯れ死が発生し、調査の結果わかったのが、2種類のマツ(モンゴリマツとアブラマツ)が混ざっているところは被害が軽く、ポプラやサージなどがあいだに生えているところはさらに良好だったことです。それ以降、GENの地球環境林のプロジェクトはすべて混植を実施しています。混植につかう樹種は、ヤナギハグミ(沙棘 Hippophae rhamnoides L. アキグミの仲間)、ムレスズメ(檸条 Caragana korshinskii Komar. マメ科)などの灌木が主ですが、ところによっては自生の広葉樹などを試験的に植えています。結果を見て、もっと造林樹種を増やしてゆきたいと考えています。
     大同県や陽高県には、80年代から地元で独自に植えたマツがかなり育って、枝打ちや間伐の必要な林があります。いままでは「封山育林」といって、完全に立ち入り禁止にして育ててきたのですが、その後の管理をどうするかが悩みの種です。いったん人をいれて切ってしまうと、ブレーキがきかないのではないかという恐れがあります。せっかく育ったマツを、日本のかつての里山のように、上手に利用して暮らしていくシステムを導入できないでしょうか。
     ヒントは地元にありました。陽高県の大泉山という村は、1960年代からマツを植え、村の周囲の山には立派な林があります。村でしっかり管理していて、村人が使う燃料はすべてマツの枝でまかなえるほどです。こうしたノウハウを、なんとかひろめていくための方法を模索しています。
    情報提供先→  http://homepage3.nifty.com/gentree/kankyourin.html

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