修辞法とは、文章上で表現する際にことばを飾ってより美しく巧みに言い表す作法・技術であり、レトリックとも言われる。
和歌における修辞の一つに「枕詞」がある。我国独特の修辞法であり、かなり古代から発生し使用されていたとされるが、その発生時期や目的は不明のままである。
枕詞は大きく二つの型に分けられる。一つは、形容的・隠喩的な種類であり、下に来る語の概念を具象化すると共に、本文の陳述を補い、その表す意趣をより豊富により美しく感じ取らせようとする配慮から生じた。二つ目は装飾的な種類の枕詞で、叙述の本筋には関係なく「懸詞」によって興趣を誘発したり、同音の反復により律調を整えたりする。これらは、さらに細分類することができる。
「第一種A型」の枕詞は、その下の語の属性となり、状態・位置を説明するものである。
「天飛ぶ鳥も使ぞ。鶴が音の 聞えむ時は、わが名問はさね」
「とこしへに、君も遇へやも。いさなとり海の浜藻の 寄る時々を」
右の例によると、「鳥」の語に対して「天飛ぶ」という枕詞を冠しており、また「海」の語には「いさなとり」という枕詞が使用されている。いずれも「鳥」や「海」の属性をそ...