英米文学特殊講義 分冊2
日本大学 文学専攻(英文学)
ジョージ・メレディス(George Meredith, 1828-1909)は、19世紀ヴィクトリア朝の小説家の一人であるが、当時の高度に成長するイギリス社会において、墜落する民衆と作家、あるいは富を得た人間、小説のあり方のみならず、社会風土全体へとその在り方を問いかけ批判する態度を向けていた人物でもある。主要作品としては‘The Egoist’(1879)が印象的で、男性のエゴイズムに対し黙々と服従する女性や、なんら精神的に男性を向上させられない女性を軽蔑するなど、自身の女性観を描いているところに魅力がある。
ヴィクトリア朝時代は1870年ごろを頂点として、イギリスの国威がもっとも発揚した時代であり、その富は世界中からかき集められ、経済は高度成長の一途をたどっていた。しかし、そのひずみが貧富の格差をはじめとするさまざまな問題となって現われはじめ、次第に人々の精神状態は鬱屈してきていた時代である。
また、19世紀に入っての産業革命の進展の結果、読者数が飛躍的に増大し、18世紀までのような少数の洗練されたエリートだけではなくなっ...