国民には集会の自由が保障されており(憲法21条)、原則として、その目的・時間・場所・方法・公開制の有無等の如何を問わず、集会を開催し、指導しまたは集会に参加するなどの行為につき、公権力が制限を加えることが禁止され、またはそのような行為を公権力によって強制されない。
他方、公権力には社会福祉・教育等の目的を実現するための条件整備を行うべき抽象的義務が課せられていると解しうる(憲法25条・26条等)。公共施設の設置もかかる条件整備の一例として考えることができる。そして、少なくとも、公権力が国民・住民の使用可能な公共施設の設置を決定し、その管理権限の行使として当該施設の使用可否決定を行うに際しては、憲法21条の保証する集会の自由に対して、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重をするようにとの憲法的規律に服することになる(憲法13条後段)。
一.上尾市社会福祉会館事件(最判平成 8 年 3 月 15 日)
1.事実の概要
JR関係労働組合(原告・被控訴人・上告人)は、何者かに殺害されたJR関係労働組合の連合体の総務
部長の合同葬を行うため、上尾市(被告・控訴人・被上告人)の福祉会館について使用許可申請を行った。
本件会館の各施設は、上尾市の住民に限らず広く一般の使用にも供されていたが、過去に元市長の市民葬
等に使用されたほかは、従来一般の葬儀に用いられたことはなかった。
申請の際、原告は、本件合同葬が追悼のための集会であること、上記殺害事件については、いわゆる内ゲ
バ事件ではないかとみて捜査がすすめられている旨を報じる新聞記事があるなどの説明をした。
これに対し、管理者たる同会館館長は、①上記殺害事件は対立するセクトによるものではないかという報
道からして、JR関係労働組合に反対する者らが本件合同葬を妨害して混乱が生じる、②同会館内の結婚式
場等の施設使用にも支障が生じるとの予測から、本件使用は、上尾市の条例6条1項1号が使用を許可しな
い事由として定める「会館の管理上支障があると認められるとき」に当たるとして使...