甲は債権者乙から1000万円を借りていたが、弁済期を過ぎても弁済できなかった。甲の財産は自分の住む土地及び建物のみである。乙のこれら不動産に対する強制執行を免れようと考えた甲は、友人丙の名を勝手に借用して、これら不動産を丙に売却したことに仮装することとし、登記を丙に移した。その後これら不動産が自己名義になっていることに気がついた丙は、自分に登記名義があるのをいいことに、これらの不動産を何も知らない丁に売却し、登記も移してしまった。この場合の法律関係を論ぜよ。
意思表示
甲は債権者乙から1000万円を借りていたが、弁済期を過ぎても弁済できなかった。甲の財産は自分の住
む土地及び建物のみである。乙のこれら不動産に対する強制執行を免れようと考えた甲は、友人丙の名を勝
手に借用して、これら不動産を丙に売却したことに仮装することとし、登記を丙に移した。その後これら不
動産が自己名義になっていることに気がついた丙は、自分に登記名義があるのをいいことに、これらの不動
産を何も知らない丁に売却し、登記も移してしまった。この場合の法律関係を論ぜよ。
1 本問において、甲は丁に売却されてしまった土地と建物を取り戻したいであろうし、甲の
債権者乙も、強制執行を行うため、丁から甲に右不動産を取り戻させたいものと思われる。
2 そこで、甲としては丁に対して所有権に基づく土地・建物の返還請求及び移転登記の抹消
請求をするという法的手段が考えられる。
3 そのため、本件不動産の所有権が甲と丁のいずれに属するのかが、この場合の法律関係として問題と
なる。
(一) この点、丙丁間の譲渡の前提となる甲丙間の譲渡は仮装にすぎず、丙は無権利者である。また、
登記に公...