事例から民法を考える (法学教室ライブラリィ)の解答です。本書は、法学教室にて人気連載の事例シリーズのうち、民法を単行本化したものです。
このシリーズは、刑法、会社法、民法と好評であり、事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を網羅するとともに「考えさせられる」良問が揃っているため、現時点で,民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
事例から民法を考える 21
第1 設問1
1 ABの家業の手伝い等の事実は寄与分(902条の2)として考慮されるか
されるなら、相続分に寄与分に加えられるので取り分を増やす方向に働くといえる
*寄与分の要件
①共同相続人が被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法によって
②被相続人財産の維持または増加に
③特別の寄与
2 本件では、
(1)子Bの家事の手伝い
→①「被相続人の事業に関する労務の提供」該当
1975年から家事手伝いがあったことから②③もOK
(2)子の配偶者A(ないしB)による療養看護
ア AはDの相続人ではない(889条参照)ので「共同相続人」(904条の2第1項)
に該当せず。したがって、Aが単独で療養介護していたのならば、寄与分として考慮さ
れない
このように解することは、寄与分制度が遺産分割手続中で共同相続人間の公平を図るという趣旨に合致する。
(AをBの手足とみることも考えうるが、解釈上無理があるP358)
イ ただし、本件では、Bも療養看護にかかる費用を負担していたことから、その点に関してはBの寄与分を肯定でき...