事例から民法を考える (法学教室ライブラリィ)の解答です。本書は、法学教室にて人気連載の事例シリーズのうち、民法を単行本化したものです。
このシリーズは、刑法、会社法、民法と好評であり、事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を網羅するとともに「考えさせられる」良問が揃っているため、現時点で,民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
事例から民法を考える17
第一 設問1
1.C→A
(1)訴訟物:CのAに対する不当利得返還請求権
(2)請負契約と所有権の帰属
請負契約において完成した目的物の所有権は注文者と請負人どちらに帰属するか。
この点、材料を自己の出捐によって供給した者に所有権の帰属を認めるのが最も当事者の合理的意思に合致するし、請負人が出捐して目的物を完成させた場合に、請負人の代金債権を確保できる。
そこで、注文者が材料の主要部分を供給したとき、建物の所有権は原始的に注文者に帰属するが、請負人が材料の主要部分を供給したときは請負人に帰属すると解する。(材料提供者帰属説)
なお、材料を請負人が供給した場合であっても、請負代金が出来高に応じて支払われる契約の場合には、代金はその出来高に対応しているから、材料の所有権も漸次注文者に移転して、不動産となった時には建物所有権を注文者が原始的に取得すると解すべきである。
もっとも、物権法の論理に基づく材料提供者帰属説は、当事者の所有権の帰属する合意を排除するものではない以上(民法176条)、当事者間に特約がある場合には、所有権の帰属は特約によって定まる。
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