事例から民法を考える (法学教室ライブラリィ)の解答です。本書は、法学教室にて人気連載の事例シリーズのうち、民法を単行本化したものです。
このシリーズは、刑法、会社法、民法と好評であり、事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を網羅するとともに「考えさせられる」良問が揃っているため、現時点で,民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
事例から民法を考える 第8問
第1 設問1「Bは、内金の残余1000万円の返還をAに求めることができるか
1 B→A:盗難による目的物引渡債務の履行不能→解除(543)
原状回復請求として、内金1000万の返還請求
(内金2000万は、受領済みの恵味200t=2000万円相当と相殺)
2 A→B;そもそも履行不能か?
(1)恵味の引渡債務は、「2010年6月から9月の収穫期に収穫する」という限定がある恵味86という種類物の引渡債務
=引渡しの対象とされる種類物が特定の範囲によって制限されている制限種類債務
→まだ300t(=800t
盗まれた300t-引渡済200t)の恵味86があるので引渡債務は存続
(2)しかし、甲倉庫内の300tに特定が生じていれば、300tの恵味の引渡債務は、履行不能といえる。
では、特定はあるか?
「債務者が物を給付するのに必要な行為」(401条2項)を完了したと言えるか。
論証;取立債務の場合における「必要な行為」とは、債務者が、弁済の準備をし、これを債権者に通知することに加え、目的物を分離することを要すると解する。
なぜなら、特定によって債権者に(給付...