事例演習民事訴訟法 第3版(新版)の解答です。事例問題形式での民亊訴訟法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を網羅するとともに「考えさせられる」良問が揃っているため、民事訴訟法における最良の演習書であると考えます。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
事例演習民事訴訟法6
1、YがA訴訟において相殺の抗弁に供することになる自動債権は、200万円の範囲でB訴訟においてYが訴求している債権と同一である。そこで、かかる債権についてA訴訟でYが相殺の抗弁を提出することは、重複起訴の禁止(142条)に抵触し許されないのではないか。別訴訴求債権を相殺の抗弁として提出することが142条に反しないかが問題となる。
(1) 確かに、相殺の抗弁の提出は「訴えの提起」には当たらず、同条を直接適用することはできない。しかし、重複起訴禁止の趣旨は被告の応訴の煩、訴訟不経済、矛盾判決といった弊害を未然に防止することにある。そして、相殺の抗弁も予備的抗弁であるとしても審理される可能性があるため審理重複という訴訟不経済をもたらす恐れがある。また、その存否の判断には既判力が生じる(114条2項)ため、矛盾判決のおそれもある。
したがって、142条を類推適用し、既に訴求している債権を別訴にて相殺の抗弁の自動債権に供することは禁止されると考えるべきである(最H3.12.17)
(2) そうすると、少なくともB訴訟において訴訟係属している200万円の範囲では、Yの選択は...