事例演習民事訴訟法 第3版(新版)の解答です。事例問題形式での民亊訴訟法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を網羅するとともに「考えさせられる」良問が揃っているため、民事訴訟法における最良の演習書であると考えます。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
事例演習民事訴訟法5
第1、本訴請求について
1、 YのAに対する敷金の交付が認められる以上、裁判所は本件店舗明渡請求について、敷金返還との引換給付判決をすることができないか。
2、 本件店舗明渡請求と敷金返還債務とが同時履行の関係にある(民法533条)、あるいは本件建物についてAが留置権(295条1項)を有すると言えるのであれば、敷金交付まで明渡しを拒絶するとの権利主張もある本件では裁判所は引換給付判決をすべきということになる。
しかし、敷金は契約成立から契約終了後の目的物の明け渡しまでに賃借人が負う一切の債務を担保する趣旨から差し入れられる金銭である。そうだとすれば、契約終了後明渡しまでの間の賃料相当額の損害賠償請求権等も敷金によって担保されるべきである。そのため、敷金返還請求権は目的物明渡しによって発生するものであり、目的物明渡しが先履行になると考える。
そうすると、敷金返還を受けるまで明け渡しを拒絶するとの主張は主張自体失当ということになる。
3、そして、Yは賃借期間満了については争っておらず、その他の抗弁も提出していないため、Xの本件店舗明渡請求と賃料相当額支払請求は認め...