1.はじめに
国際競争は、今日の企業および政府が直面する最重要問題の一つになった。各国は何百年にわたって貿易をしており、多国籍企業は今世紀の初頭以来ビジネスの世界で注目されてきている。
国境を超えた財の取引を国際マーケティングであると暫定的に考えると、その歴史間の交易、大航海時代に拓かれた海の通商など、その取引は次第に広域化してきた。16世紀から17世紀にはいると、国富は貿易差額と農業生産によるとして重商主義、重農主義を価値観とし、18世紀にイギリスで興った産業革命以降の資本主義経済ではGNP、資本ストックを国富の源泉として、経済ブロック間の衝突を招いた。その反省にたって、第2次大戦後はIMF・GATT体制下で貿易の自由化を進めてきた。
1980年代に入ると世界経済で対外直接投資が果たす役割が大きくなり、直接投資が牽引する貿易が増加してきた。貿易を主体として、これを代替するために直接投資をするという経済構造ではなくなった。また、サービスの貿易も増している。これからの国際マーケティングは、こうした世界経済の構造変化の下で論ずる必要がある。
もう一つの視点は、日本社会の意識と経済構造の問題である。国際化とは内から外に出ていくという発想が強く、財や資本の流れ、ヒトの流れにこれが表れている。そのために、輸入財は鉱物資源、原材料のように日本経済に不可欠なものを主体としてきた。最近では相対的に優位性をもつ外国製品の輸入が増加しているが、製品輸入比率は50%台に留まっている。資本面でも1993年末の日本の対外直接投資の残高はそれぞれ2、598億ドル、169億ドル(国際収支ベース)で、前者が15.4倍にのぼる。この倍率は米国の1.2倍、英国の1.3倍、ドイツの1.5倍、フランスの1.3倍に比べると、非常に高い。
したがって、われわれは、国際マーケティング、すなわち輸出マーケテイングであるという感覚に陥りがちである。いま必要なのは、内から外への国際化の発想を捨てて、地球規模の視野から財・サービスの輸出と輸入、対外直接投資と対内直接投資を総合した経営戦略の一環として、国際マーケティングを考えることである。
グローバル時代のマーケティング戦略
1.はじめに
国際競争は、今日の企業および政府が直面する最重要問題の一つになった。各国は何百年にわたって貿易をしており、多国籍企業は今世紀の初頭以来ビジネスの世界で注目されてきている。
国境を超えた財の取引を国際マーケティングであると暫定的に考えると、その歴史間の交易、大航海時代に拓かれた海の通商など、その取引は次第に広域化してきた。16世紀から17世紀にはいると、国富は貿易差額と農業生産によるとして重商主義、重農主義を価値観とし、18世紀にイギリスで興った産業革命以降の資本主義経済ではGNP、資本ストックを国富の源泉として、経済ブロック間の衝突を招いた。その反省にたって、第2次大戦後はIMF・GATT体制下で貿易の自由化を進めてきた。
1980年代に入ると世界経済で対外直接投資が果たす役割が大きくなり、直接投資が牽引する貿易が増加してきた。貿易を主体として、これを代替するために直接投資をするという経済構造ではなくなった。また、サービスの貿易も増している。これからの国際マーケティングは、こうした世界経済の構造変化の下で論ずる必要がある。
もう一つの...