商法・会社法 新株発行と第三者責任

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    資料紹介

    第1 論点に対する判例の立場
    1 定款による株式譲渡制限の定めがある会社において、取締役会の承認なく競売により株式の取得がなされたが、株主名簿上の名義株主は従前のまま譲渡人である場合に、会社はなお譲渡人を株主として取り扱う義務を負うか。
    取締役会の承認がない譲渡制限株式の譲渡の効力に関して、判例は昭和48年6月15日の最高裁判決(民集27巻6号700頁・判時710号97頁)において、相対説(譲渡当事者間では有効であるが会社に対する関係では無効とする)をとっている。また、この点に関し、譲渡制限付の株式が競売された場合における従前の株主の地位について、判例は昭和63年3月15日の上告審判決(判時1273号124頁)において、前記昭和48年6月15日の最高裁判決を引用しながら、従前の株主である譲渡人は会社に対する関係ではなお株主としての地位を有し、会社は譲渡人を株主として取扱う義務を負うと判示している。
    これらを踏まえて、本件の上告審判決は、会社に対する関係では従前の株主がなお株主としての地位を有し、会社はこれを株主として取扱う義務を負うと判示した。そして、差戻後の本控訴審判決も、かかる判例をそのまま踏襲した。
    2 特定の株主に対する株主総会収集通知の欠如が、他の株主らに対する関係において、取締役の職務上の義務違反となるか。
      この点、昭和42年9月28日の最高裁判決(判時498号61頁)において、他の株主に対する株主総会の収集通知に瑕疵がある場合に、収集通知を受けた株主による決議取消の訴えの提起が認められた。
    本件の上告審判決は、これを踏まえ、会社の最高の意思決定機関である株主総会における公正な意思形成を保障するとの目的から、収集通知の欠如はすべての株主に対する関係において取締役である被告側の職務上の義務違反を構成するものと判示している。そこで、差戻後の本控訴審判決も、この判例をそのまま踏襲した。

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    商法演習Ⅰ
    特定の株主に対する召集通知の欠缺と取締役の第三者責任
    平成11年6月17日大阪高裁判決(判時1717号144頁、金判1088号38頁)
    第1 論点に対する判例の立場
    1 定款による株式譲渡制限の定めがある会社において、取締役会の承認なく競売により株式の取得がなされたが、株主名簿上の名義株主は従前のまま譲渡人である場合に、会社はなお譲渡人を株主として取り扱う義務を負うか。
    取締役会の承認がない譲渡制限株式の譲渡の効力に関して、判例は昭和48年6月15日の最高裁判決(民集27巻6号700頁・判時710号97頁)において、相対説(譲渡当事者間では有効であるが会社に対する関係では無効とする)をとっている。また、この点に関し、譲渡制限付の株式が競売された場合における従前の株主の地位について、判例は昭和63年3月15日の上告審判決(判時1273号124頁)において、前記昭和48年6月15日の最高裁判決を引用しながら、従前の株主である譲渡人は会社に対する関係ではなお株主としての地位を有し、会社は譲渡人を株主として取扱う義務を負うと判示している。
    これらを踏まえて、本件の上告審判決は、会社...

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