問1
大手建築会社Aは、ロボットの操作を主とした画期的建築方法を開発し、その工程をプログラム化するため、コンピュータソフト会社Bにソフトの開発を依頼した。そのような高度なソフトを作成する能力を持つ者はBに雇用されている技術者Cしかいない。諸君がAの法務担当者であると仮定せよ。たとえば、以下のような点を考慮しつつ、Bと契約するには、どのような内容の条項を契約書に盛り込むべきか。?Bには、画期的な建築方法であることを詳しく説明しなければならないが、Bから他に漏洩するならAは大損害を被るので防止策を講じる必要がある。?履行期を決めておく必要があるのは当然だが、Aは当初から開発費を全額援助するつもりである。ただし、開発不成功のときは返してもらう。?ソフトが完成したならばAにおいてテストし、不都合があればBに作り直してもらう。?ソフトが完全に作動するようになったら、BがAの担当者に操作方法を教育してもらう。?Cが解雇されたり他の企業の引き抜きにあったときの対策を決めておく。?Bが倒産したり、契約上の地位を他に譲渡するのを防止せねばならない。?万が一、他のソフトメーカーが同一のソフトを売り出した場合の対策を講じる必要がある。?履行期に遅れた場合にはどうするのかを決める必要がある。?ソフト完成まで時日を要するため、経済情勢の変動等で当該建築方法が市場性を失って開発が無意味にとなったときの対策を考えておく必要がある。
問2
甲は、乙所有の土地建物(本件不動産)を直接乙から購入することにし、手付けを交付した。しかし、その後調べていくうちに、本件不動産の付近には暴力団の事務所があり、暴力団同士の紛争がよくあることが判明した。甲が乙にそのことを問いただすと、紛争はあったようだが、暴力団とは知らなかったなどと曖昧なことを言う。家族の安全を考えた甲は、買う気を無くしてきたので契約を解除したいが、どのような法律論が考えられるか。考えられるものをできるだけ多く挙げ、それぞれの差異を説明せよ。
ヴァルター・ベンヤミン『一九〇〇年頃のベルリンの幼年時代』を読んで
ベンヤミンの文章の和訳に初めて触れた感想は、なんて意味深く、感慨深い文章なのだろう、というものであった。センテンスのひとつひとつに心を揺り動かされ、彼の幼年時代の経験と似たような自分の経験を探してみたり、そのようなものが見つからない場合には、彼の気持ちに近づいてみようとしたりした。彼の書きとめている事象は、ただの風景の描写であったり、遅刻や手伝いなどの日常の記録であるのにもかかわらず、その内容は、大変興味深いものであった。自分が普段何気なくしている捉え方に、疑問を投げかけざるを得なくなったのだ。まず、彼がこの文章を書いた経緯から驚かされた。思い出を、思い出として忘れないでいるために思い起こして書き留めたわけではなくて、亡命生活において、イメージが郷愁を呼び覚ますことのないように、「予防接種」として彼の内部に呼び起こしたというのである。
ここで、ベンヤミンの、時間の捉え方に注目したい。「ロッジア」で「この場所が忘却の手に落ちる前に、ときおり芸術が、ここを美しく輝かせようと試みたものだ。」とあり、「その壁に沿って幅広の帯状...