本論文の問題意識は次のように示される。中国は「改革開放」政策実施以来の急速な経済発展によって1997年に自給自足型のエネルギー需給構造に終止符を打ち、エネルギー輸出国から輸入国へと転落した。一方、エネルギー消費の増加の結果、CO2排出量はアメリカに次ぎ世界2番目となった。中国のエネルギー消費量やCO2排出量が世界で大きいシェアを占めつつある中、中国共産党第16回全国代表大会では、2020年のGDPを2000年の4倍にする目標を達成すると発表している。この目標達成において、エネルギー安定供給の確保は重要な課題となるが、温室効果ガスの削減など環境問題への配慮も必要となってくる。この三つの問題いわゆる経済成長(Economic Growth)、エネルギーの安定供給確保(Energy Security)、地球温暖化防止などの環境保全(Environmental Protection)という3Eを同時に解決する鍵として省エネルギーが挙げられる。省エネルギーの推進によって、エネルギーの安定供給への大幅な寄与、またCO2など温室効果ガスの削減は確実となる。従って、今後の中国の経済発展において、省エネルギー政策は重要な位置を占める。
以上の問題意識に基づき、本論文では、製造業を中心として日中省エネルギー政策の比較分析を行い、実効性を持つ中国の省エネルギー政策のあり方を検討することを目的としている。なお、その比較分析においては、日中両国の省エネ法体系およびその実施手段、省エネ技術開発、省エネ意識の形成に焦点をあてている。
はじめに
世界のエネルギー消費は、開発途上国の人口増加と急速な経済発展を背景として確実に増え続けている。特に日本を除くアジア地域のエネルギー消費の増加が著しく、今後も増え続ける見通しである。その中でも中国は、「改革開放」政策実施以来の急速な経済発展によって1997年に自給自足型のエネルギー需給構造に終止符を打ち、さらにエネルギー需要を伸ばし、2000年~2004年においては世界石油消費増加分の 34% を占めるに至っている。
エネルギー消費の増加の結果、中国のエネルギー関連CO2排出量はアメリカに次いで世界2番目となった。IEA (World Energy Outlook2002)によれば、中国の一次エネルギー消費量は2020年に17億トン(石油換算)で、世界の一次エネルギー消費量に占めるシェアも2002年の38%から2020年には45%に増大すると見込まれている。一方、CO2排出量は2002年の33億700万トンから2020年には57億800万トンまで1.7倍以上に増大すると予測されている 。
中国のエネルギー消費量やCO2排出量が世界で大きいシェアを占めつつある中、中国共産党...