論点
「財産分与請求権についても債権者取消権の行使は可能か否か」
<序説>
離婚に際しての財産分与請求権が財産権としてどのような法的性質を有するのかについては諸説ある。?形成説は協議・審判によって形成されて始めて財産権として発生すると説く、?確認説は、財産分与請求権は離婚という事実によって当然に発生し、審判はそれを確認するに過ぎないと説く、?折衷説は確認説の立場に立ちつつも、形成説と同様に協議や審判によって形成されて初めて発生すると説く。判例は、折衷説の立場に立っているが、財産権としての性質をどのように認めるかについては、債権者取消権行使の対象となるのかが問題となる。
債権者取消権は、財産権を目的とする債務者の法律行為について、債権者が自らの債権の責任財産が債務者の元から流出することを防止する目的で、債権者が取消をすることができる権利である。これは、財産権を目的とする法律行為に適用があり、相続の場合には適用されないとの判例がある。また、取消権行使の要件としては、被保全債権が処分よりも前に存在することを要する。
財産分与請求権についても債権者取消権の行使は可能か否か検討する。
最判昭和58年12月19日第二小法廷判決
<事実の概要>
A男とY女は昭和22年に婚姻した。夫婦の間には二男三女の五人の子供がいた。昭和31年に夫婦でクリーニング店を開業し、昭和49年からA男が個人・法人名義で金融・不動産業を開業したのを契機にクリーニング店はY女に一任された。その際、金融・不動産業の開業資金としてA男はX信用組合から融資を受けていた。一方でA男はB女と不倫関係にあり、その間に子供をもうけていた。
昭和51年手形不渡りによりA名義の法人が倒産した。同年12月22日にA男とY女は協議離婚することになった。
民法判例―「財産分与と詐害行為取消権」
論点「財産分与請求権についても債権者取消権の行使は可能か否か」
<序説>
離婚に際しての財産分与請求権が財産権としてどのような法的性質を有するのかについては諸説ある。①形成説は協議・審判によって形成されて始めて財産権として発生すると説く、②確認説は、財産分与請求権は離婚という事実によって当然に発生し、審判はそれを確認するに過ぎないと説く、③折衷説は確認説の立場に立ちつつも、形成説と同様に協議や審判によって形成されて初めて発生すると説く。判例は、折衷説の立場に立っているが、財産権としての性質をどのように認めるかについては、債権者取消権行使の対象となるのかが...