連関資料 :: 可罰的違法性の理論と判例

資料:2件

  • 刑法総論 「違法理論判例
  • 刑法総論 犯罪論-違法性 「可罰的違法性の理論と判例」 1.総論 違法性の本質については結果無価値論と行為無価値論との争いがある。結果無価値論と は、違法性の実質を「法益の侵害ないしその危険性を生じさせた結果」と理解する見解で ある。行為の結果に着目し、否定的評価(無価値)を加えたもので、結果の無価値性をそ の理論根拠とする。これに対し行為無価値論は、結果の無価値のみならず、「行為の種類や 方法・意図・目的などを客観的・主観的な要素によって特徴付けられる行為の全体的ありよ うが社会倫理上相当であるか否かの点もあわせて考慮し、その相当性からの逸脱」として 違法性を理解する見解である。 しかし、わが国の行為無価値論は、行為無価値で一元的に理解するのではなく、結果無 価値とともに行為無価値をも考慮するという「二元的行為無価値論」を採用している。こ れは、結果無価値論は法益侵害またはその危険という結果のみで違法とし、侵害・危害を 生じさせた結果にいたる過程(行為過程)を全く考慮しないという点に問題があり、他方、 行為無価値論はこうした結果無価値論の問題点を克服してはいるものの、法以外の道徳や 秩序といったあいまいなものに反することが違法であるとする点で、実質的法益侵害がな いにも拘らず、違法であるとすることに問題があり、よって、両者を併せて二元的に行為 無価値を把握する考え方であり、現在の通説となっている。 しかしながら、その違法性の「程度」や「量」について注意を必要とする事例について は、可罰的違法性の理論が主張されてきた。 2.可罰的違法性の理論 (1)可罰的違法性の理論 可罰的違法性(処罰に値する程度の違法性)の理論とは、外見上、構成要件に該当し、 違法に見える行為であっても、その違法性が可罰的な程度に達していない時には罪が成立 しないとする理論で、可罰的違法性のない犯罪は、この超法規的違法性阻却事由によって 無罪となる。例えば、刑法235条の窃盗罪の構成要件該当行為は、「財物の盗取」であり、 それに対する刑罰は「1ヶ月~10 年の懲役刑」である。しかし、この 1 ヶ月の懲役に値し ない程度、10円を盗んだ時には違法性が刑罰という最も厳しい法効果を加えるに値しな いものである時には、その違法性が可罰的なものに達しないことから、違法性を阻却しよ うという考え方である。 (2)違法性の相対性 可罰的違法性に関する論点として、違法性の質の問題がある。これは、姦通罪は現行刑 法上、犯罪としての規定がなく違法性・犯罪が成立しないものであるが、民法上は離婚請 求原因となる。このように、他の法領域で違法な行為について直ちに刑法でも違法となる かということについて、違法の相対性に関し問題となりうる。 事例1)官公庁の公務員は、国家公務員法・地方公務員法により争議行為を禁止されている。こ れらの行政法上の違法がある場合に、直ちに刑法上も違法性があるといえるか。 事例2)無免許医業として、無資格の者が手術を行った。これは医師法違反であるが、直ちに刑 法上の傷害罪も成立するか。 こうした事例に関し、違法の相対性については、3 つの考え方がある。 ①厳格な違法一元論・・・あらゆる法領域で、違法性を一元的に考えるべきであるとする説 これに従えば、行政法・医師法等いずれかの法律で違法であれば、刑法でも違法と解す ることになる。 ②やわらかな違法一元論・・・違法性が根本において法秩序全体に通じる統一的なものであ りながら、その発現形式にはさまざ
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