精神医療の歴史とは、精神障害者を対象とした治療に関する変遷であるが、同時に精神障害をもつ人々の処遇の歴史であり、精神障害に対する社会の見方の時代的移り変わりでもある。以下、西洋と日本の精神医療歴史を例に述べることとする。
1-1.西洋の歴史
(1)ギリシャ・ローマ時代
神話・伝説によると、太古の昔から精神病患者は存在していたと考えられるが、病人とはみなされず、悪霊が憑いているなどと言われ、残虐な手段や宗教的儀式が行われていた。
しかしギリシャ・ローマ時代になると、ヒポクラテスが狂気に生理学的な解釈を加え、医学的な基礎づけを行った。またガレノスは精神のありかは「脳」にあると結論づけている。一方、アスクレピアスは治療における心理的側面を重視し、今日の作業療法にあたることを行ったと伝えられている。
(2)中世
キリスト教の影響下で、精神障害は宗教的な理解の対象となり、鬼神論が再燃し、精神障害者にとっては、「中世の暗黒時代」になり、宗教的拷問や刑法上の犯罪者として終身拘束された。しかし14世紀のルネサンスの人道主義によって、わずかながらも科学的理解が回復し、僧院などに収容所が設けられた。
15世紀に、はスペイン・イギリスに精神病収容所が作られ、大規模な病院らしい施設は1751年ロンドンに建てられた聖ルカ癲狂院であるが、これらの施設は患者を監禁しておく場所で、悲惨を極めた状態であった。こうした時代状況の中で、ドイツのヨハン=ワイヤーは、精神疾患と悪魔の関係を否定した。
(3)近古
18世紀末のフランス革命直後に、パリのビセートル病院長であるピネルが患者を鎖から解放し、病める人間として扱った。これは、ヨーロッパ各地に広がり、イギリスでは19世紀前半にテュークがヨーク療養所を設立し、精神障害者の人間性の尊重・自由・労働を強調して道徳療法を始めた。また、コノリーが精神障害者に対し無拘束の原則を確立した。
精神医療の歴史及び精神医学の概念について
精神医療の歴史とは、精神障害者を対象とした治療に関する変遷であるが、同時に精神障害をもつ人々の処遇の歴史であり、精神障害に対する社会の見方の時代的移り変わりでもある。以下、西洋と日本の精神医療歴史を例に述べることとする。
1-1.西洋の歴史
(1)ギリシャ・ローマ時代
神話・伝説によると、太古の昔から精神病患者は存在していたと考えられるが、病人とはみなされず、悪霊が憑いているなどと言われ、残虐な手段や宗教的儀式が行われていた。
しかしギリシャ・ローマ時代になると、ヒポクラテスが狂気に生理学的な解釈を加え、医学的な基礎づけを行った。またガレノスは精神のありかは「脳」にあると結論づけている。一方、アスクレピアスは治療における心理的側面を重視し、今日の作業療法にあたることを行ったと伝えられている。
(2)中世
キリスト教の影響下で、精神障害は宗教的な理解の対象となり、鬼神論が再燃し、精神障害者にとっては、「中世の暗黒時代」になり、宗教的拷問や刑法上の犯罪者として終身拘束された。しかし14世紀のルネサンスの人道主義によって、わずかながらも科学的理解が...