文明社会の明暗
文明社会では、
生産活動は専門化、細分化され、それぞれ濃密な相互依存関係をもつ(分業と結合)。
社会階層は生産を軸として考察され、資本家、労働者、地主といった階級が中心。
文明社会は生産力の高度な発展とその増大に裏打ちされており、社会的不平等を補って余りある豊かさを約束。
文明社会論を展開した人々は、無条件にこの「豊かな世界」を賛美したのではなく、文明社会が人間の道徳的・政治的成長に及ぼすマイナスの側面に鋭い関心を払っていた。
*アダム・スミスは文明社会の不利益として、生産・商業中心の生活は人々の精神の発展を一面的にし、政治的、軍事的関心など求むべくもない人々を生み出したとしている。
彼らは、商工階級の議会進出を容易にするような形で社会の変化に対応することには消極的であり、文明社会の生み出す自己利益追求中心の政治屋ではない、高度の判断力と思慮とをもつ優れた人々の手に、政治を委ねようとした。
イギリスの文明社会論
新しい社会のイメージ
フランスの思想家たちの注目した文明社会は、イギリスにおいてより徹底した形で興味と分析の対象となった。
マンデヴィル(Mandeville 1670-1733)
著書『蜂の寓話,または私人の悪徳,公共の利得』
人間の自己愛という悪徳こそが商業社会繁栄の源泉である。人間は自己愛に支配された存在であり、その特質は自己愛を社会という形で組織したことにある。政治は自己愛の組織化を可能にし、自己愛は名誉の追及という形式で政治を支えた。政治は社会的統合と財産の安全、富の追求、学芸や技術の発展を可能にし、文明社会を生んだ。
単純に個人が自己愛を満たすだけではなく、相互にそれを満たすための社会的ネットワークが発生する。
公共の利益は個人の倫理的向上を要求するという、ギリシア以来の大前提が疑問に付されることとなった。
スコットランド啓蒙・・・商業社会としての文明社会の性格をより体系的、多面的に考察したスコットランドの知識人たち。
研究分野 道徳哲学 文明人の生活
文明社会史 文明社会の発展
国民経済学 文明人の生産活動
彼らは文明...