『正当防衛』
<正当防衛の意義>
正当防衛とは、急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為をいう(§36Ⅰ)。違法性の実質は、社会的相当性を逸脱した法益侵害行為である。そして、正当防衛は、緊急状態の下で法益侵害に対して反撃し、法自体の存在を確認するものであるから、社会的相当性が認められ、違法性が阻却される。
<正当防衛の要件>
①急迫
②不正の
③侵害に対して
④自己又は他人の権利を
⑤守るため(防衛行為・防衛の意思)
⑥やむを得ずにした行為(必要性・相当性)
<急迫>
急迫とは、法益侵害の危険が切迫していることをいう。(過去や将来の侵害に対する正当防衛は認められない)
<不正>
不正とは、違法であることをいう。(適法な侵害に対する正当防衛は認められない)
<対物防衛>
対物防衛とは、物、特に動物による侵害行為に対する正当防衛をいう。動物傷害罪(§261)にあたる行為であるが、違法性が阻却されるか。
この点、違法評価は法益に対する侵害行為に向けられうることから、正当防衛を肯定する説もある。しかし、そもそも法というのは、人間共同体の規範であり、動物...