「ツーリズム産業論」
1.ツーリズム産業とは何か
(1)経済的側面から
ツーリズム産業は、観光・旅行という人間の行動に関わる様々な分野・産業を内包する、非常に裾野の広い産業である。その中心は旅行業、そして交通機関、そして宿泊施設、飲食施設、テーマパーク、各種レジャー施設などの観光関連産業であるが、これら以外にも農林漁業、二次加工産業、各種製造業、保険業といった周辺産業や、地域住民、行政など様々なステイクホルダーと関わりを持つ産業であるという点が特徴的である。こうした裾野の広さは経済波及効果にも表れている。我が国における旅行による直接消費額は24.5兆円(GDPの2.4%)であり、またこれによって生み出される雇用は235万人(全雇用の3.6%)にも及ぶ。さらに、波及効果に目を転ずると生産波及効果は55.4兆円、付加価値効果は29.7兆円、雇用効果は475万人に膨れ上がる。
(2)社会的・文化的側面から
こうした経済的な側面のみならず、ツーリズム産業は社会的・文化的にも重要な意味を持っている。有史以来、旅行記や紀行文と呼ばれる類の書物が数多く残されてきたことからも分かるように、旅をする...