アメリカの保守主義について、特に強調されたいのは、宗教から生まれているものだと思われる。というのも、アメリカはキリスト教による規定が強い世界であり、保守主義というものもそこから生まれているからである。
「新大陸上陸」を果たしたピューリタンは、自分たちの行動を、未開の地に理想の社会を築く、という神からの使命によるものだとしており、自らの行動をそれにより正当化していった。当時以来、アメリカにおける演説・説教のスタイルにAmerican Jeremiadというものがあるが、これは現実の腐敗や堕落を批判しつつ、しかし努力次第でこれからよくなる、と述べて人々の努力を促すものであり、進行性や発展途上性を強調した。この論法はキング牧師のスピーチにもあらわれているといわれているが、建国以来アメリカ人の思想の底辺部に流れている考えとも言えよう。
佐々木毅著『現代アメリカの保守主義』(岩波書店)
<要約>(400字×4)
第1章 現代アメリカ保守主義の世界
第2次大戦後の保守主義の興隆は、1940年代後半から50年代にかけての共産主義の拡大に対するもの、60年代の政治・文化的動きへの抵抗、70年代の経済の低下に対する再生を求めるものの3段階に分けられる。
保守主義は80年代の分析により、共和党エスタブリッシュメント、オールドライト、新保守主義者、ニューライト、キリスト教ニューライトの5つのグループに分けられる。
アメリカの保守主義者は日本などの伝統的文化を尊び秩序を支持するものと違って、自由の強調、小さな政府の主張、中間的関係の重要性を強調する経済中心的・唯物主義的性格を帯びたものである。
第2章 保守主義の理念
下院議員のケンプは、アメリカの経済や、自己の努力と才能でチャンスをつかむという「アメリカの夢」の再現のため、小さな政府による経済成長を主張した。
キリスト教ニューライトでテレビ伝道師のフォルウェルは、70年代のアメリカの内なる道徳的頽廃=麻薬・同性愛・人工中絶等との戦闘的対決を試み、アメリカの再生は道徳的・宗教的なもの...