「日本の経済格差」の中で、筆者は、バブル期に土地・株式が急騰したこと、低成長に入って所得が上昇しないこと、などから「一億総中流」に象徴される社会の平等・安定意識は揺らいでいることを示し、時代の推移のなかで、そして国際比較の上で、格差の拡大を統計データによって詳細に検証し、その経済的メカニズムを明らかにしながら、税制や、教育・企業システムなどの課題を示している。その中で、私が特に気になったのは、教育問題である。
さて、教育問題についてだが、日本は就職および昇進にも学歴が関わっているといわれている。日本人は、90パーセント以上が高校に行き、また40パーセント以上が大学、または短大に進学しているということから、日本が世界有数の高学歴社会であることは明らかである。また、欧米と違って、厳しい大学受験があることも日本の特徴である。それは、最近、韓国、中国などのアジアでは日本よりも厳しい受験戦争と聞くが、そのすべてに共通することが、学力社会であるということである。「日本が低学歴社会の時期にあっては、学歴水準の違いが本人の到達レベルを決めるのに重要であった。学歴の高い人が、高い階層につく教育メリットクラシーが生きていた。高度成長のおかげで日本国民の所得水準が伸びたことも、多くの人に高学歴を受けることを可能にしたのである。高学歴が普及すると学歴水準が階層を決める効果が弱まり、戦前のように親の階層が子供の階層を決める程度が再び高まり、階層固定化、再生産が再び社会の特色となりつつある。と同時に高学歴社会の中でどの大学を卒業したかの影響力が高まり、卒業大学名によるメリットクラシーが台頭している。」(p166)と著者は言う。実際、多くの受験生は、大学に行くために勉強しているというよりも、有名大学に行くために勉強しているという傾向がある。有名大学に入ることで、有名企業に入ることができ、その後の人生がすべてうまくいくという話が神話的に信じられていることも事実である。確かに、ある企業では、就職活動において、有名企業の学生しか受け入れないという学歴主義を前面に押し出した面接をしているところもあると聞く。しかし、そのような厳しい受験戦争の後、学生が学問的勉強よりも、社会的勉強に集中してしまう。
「日本の経済格差」の中で、筆者は、バブル期に土地・株式が急騰したこと、低成長に入って所得が上昇しないこと、などから「一億総中流」に象徴される社会の平等・安定意識は揺らいでいることを示し、時代の推移のなかで、そして国際比較の上で、格差の拡大を統計データによって詳細に検証し、その経済的メカニズムを明らかにしながら、税制や、教育・企業システムなどの課題を示している。その中で、私が特に気になったのは、教育問題である。
さて、教育問題についてだが、日本は就職および昇進にも学歴が関わっているといわれている。日本人は、90パーセント以上が高校に行き、また40パーセント以上が大学、または短大に進学しているということから、日本が世界有数の高学歴社会であることは明らかである。また、欧米と違って、厳しい大学受験があることも日本の特徴である。それは、最近、韓国、中国などのアジアでは日本よりも厳しい受験戦争と聞くが、そのすべてに共通することが、学力社会であるということである。「日本が低学歴社会の時期にあっては、学歴水準の違いが本人の到達レベルを決めるのに重要であった。学歴の高い人が、高い階層につく教育メリットク...