歴史人口学はまだ日が浅い学問で、資料そのものの収集が困難なこと、データベース作成に非常に手間とお金がかかること、などの問題点があるが、「ボトムアップの学問」の視野を有しているというこの特色は、これからも大いに重要視されるべきだと感じる。
日本における歴史人口学の重要性に関して
日本における歴史人口学を学んで得たことの一つとして、歴史を見つめ直す新しい視野の存在、というのが挙げられる。今まで当たり前のこととされてきた歴史的事実の新たな側面を見たり、現代に生きる自分たちの生活が、実は、遠く離れた昔から育まれてきた何かによって形成されていることを知ったり…。このように、この新しい歴史的視野というのは、歴史の既成概念を打ち壊し、それ自身をより身近で、生き生きとしたものに感じさせてくれる。またそれに加えて、新たに知った歴史の面白さは、資料の読み解きにある。こんなものから一体何が分かるの?と思うような、古くて一見何の価値もなさそうな古資料から、次々と新しい事実が洗い出されていく。これが実に面白い。しかもそれらは、しっかり数字にのっとっていて、理論的であり、分かりやすいのだ。
こうして私は、歴史を新たな視点から掘り下げ、かつ理論的な方法で探っていくという面白さを知った上で、今回のレポートを書くにあたって一冊の本を選び出した。速水融の「歴史人口学で見た日本」である。背表紙の概要を読み、「人口の観点から歴史を見直そうとする…」という...