偽造の登記申請委任状による登記-家屋明渡請求事件 (最高裁昭和二九年六月二五日第二小法廷判決) (民集八巻六号一三二一頁)
一、登記の諸問題:
1.登記(とうき)とは、法に定められた一定の事柄を帳簿や台帳に記載することをいう。
一般には権利関係などを公示するため法務局(登記所)に備える登記簿に記載すること、又は、その記載をいう。そのほかには会計法などの規定に基づいて行われる国などの会計帳簿(現金出納簿など)への登記がある。
2.不動産登記とは、不動産(土地・建物)の物理的現況及び権利関係を公示することを目的とする登記で、取引の安全を保護するのに役立つ(公示力)。不動産の物理的現況を公示する「表示に関する登記」と、権利関係を公示する「権利に関する登記」の2種類に分かれる。
によっては所有権を失うこともある)。これは、登記を信頼して取引に入った第三者を保護するとともに、このような不利益を受けないために権利者が登記を具備するよう促すことによって、実際の権利関係と登記が一致する状態を維持するためである。これによって、登記を信頼して取引関係に入ることが可能になり、取引の安全が担保されるのである。
ただし、以上とは逆に、実際には無権利者であるのに、権利者であるかのような登記がされていたとしても、これを信頼して無権利者から買い受けた者は保護されない(不動産登記には公信力がない)。
、偽造文書による登記の問題
1.ことが必要である。
ところで、手続的有効要件のうち、登記申請手続の主役ともいうべき、当事者の申請意思を欠くとき(その最も典型的なのが偽造文書による登記である)にその登記の効力をどう解すべきかが大きな問題である。
2.偽造文書による登記の問題は、主に当該登記の効力、従って当該登記に対する抹消登記請求の当否(ときには登記に基づく権利の第三者に対する対抗力の存否が問題となるのである)は、本来客観的には、登記権利者と登記義務者の両者について生じうるはずであるが、実際上問題となるのは、登記義務者についてのみである。
3.一般に、「偽造文書による登記」について、最も論じられるのは、当該登記が、当初からまたはのちに何らかの事由によって実体上の権利関係と一致したときに、その登記の効力を認めるべきかどうかということである。
この効力の問題は、二種に分ちうる。すなわち、当該「偽造文書による登記」が、その登記手続の段階において実体上の関係と符合している場合と、その登記手続の段階においては実体上の権利関係と符合していないが、後に何らかの事由によって実体上の権利関係と符合するに至った場合とに分ちうる。
までも、当該登記手続を実行する者は、登記義務者の代理人にたるべきような者に限られているといってよい。後者の場合は、「偽造文書」を作成して当該登記手続を実行する者は、当該不動産の取引について何らかの意味で利害関係を有しているといってよく、当該不動産の権利者等の話合いその他によって、たとえば本人から追認してもらうなどによって、実体上の権利関係を登記と符合させるようにするようなときである。
三.数々の学説
1.形式主義:偽造文書による登記をすべて無効とする。現在では説く学者もいないといってよく、過去の見解ともいえよう。
2.主観説(意思主義):登記義務者における登記申請意思の存在を重視し、当該登記申請が登記義務者の不知の間になされた場合において、その者に申請意思がなかったときにはその登記を無効
偽造の登記申請委任状による登記-家屋明渡請求事件 (最高裁昭和二九年六月二五日第二小法廷判決) (民集八巻六号一三二一頁)
一、登記の諸問題:
1.登記(とうき)とは、法に定められた一定の事柄を帳簿や台帳に記載することをいう。
一般には権利関係などを公示するため法務局(登記所)に備える登記簿に記載すること、又は、その記載をいう。そのほかには会計法などの規定に基づいて行われる国などの会計帳簿(現金出納簿など)への登記がある。
2.不動産登記とは、不動産(土地・建物)の物理的現況及び権利関係を公示することを目的とする登記で、取引の安全を保護するのに役立つ(公示力)。不動産の物理的現況を公示する「表示に関する登記」と、権利関係を公示する「権利に関する登記」の2種類に分かれる。
によっては所有権を失うこともある)。これは、登記を信頼して取引に入った第三者を保護するとともに、このような不利益を受けないために権利者が登記を具備するよう促すことによって、実際の権利関係と登記が一致する状態を維持するためである。これによっ...