現代社会における児童と家庭をめぐる状況は大きく変容しており、離婚率の増加から来る母子家庭、父子家庭などのいわゆるひとり親家庭の問題などとも相まって、児童の成長や生活の質、親と子の関係のありよう、さらには家庭機能の低下の問題などが深刻化してきている。そこで、こうした社会の変容が児童や親に具体的にどのような変化となって現れてきているのかを見ていきたい。
児童の変容のまず第1にあげられるのは、生活時間や遊びなどにおける児童の生活の変化である。この四半世紀のあいだでの児童の生活時間をみると、学業やテレビゲームなどに費やす時間が増加し、睡眠や家事手伝いなどに費やす時間が減少している。また、児童の通塾率は増加傾向にあり、逆に戸外で遊ぶことが少なくなって、交友関係も縮小してき
ていることが各種の調査によって明らかになっている。また、こうした傾向から、児童が主体的に遊び、自らの可能性を開花させ、「生きる力」の基礎を育成するための「時間」「空間」「仲間」のいわゆる三間の縮小化の進行が指摘されている。第2にあげられているのは、児童のストレスに耐える力の低下である。児童の人間関係の縮小化や希薄化が児童の生きる力を低下させていることは前述したとおりであるが、この結果はまた、児童のストレスに耐える力を低下させ、心理・行動上の問題を引き起こしやすくしている。これらは少年非行の増加や、いじめによる不登校児の増加など、社会問題の一要因となっているとも指摘されており、家庭や学校、地域社会の連携した対応の重要性が求められている。
わが国の「少子化」の要因および児童に及ぼす影響について述べなさい。
平成16年6月の新聞発表によると、わが国の平成15年度の合計特殊出生率は前年度の1.32人からさらに1.29人にまで落ち込んだと報じられており、少子高齢化の更なる進行に伴う経済や社会保障関係への懸念が深刻化している。合計特殊出生率は、昭和50年に2.00を下回ってからは低下を続け、人口の置き換え水準である2.08を下回る低水準が続いている。少子・高齢社会の社会経済に及ぼす影響の大きさは、労働力の確保という経済的側面のほか、消費経済にも大きな影響を及ぼす他、両親の扶養といった高齢化問題を少ない数の子どもたらが背負っていかなければならないといった課題を残していくものでもあるといわれている。こうしたなかでの少子化対策は、わが国の深刻な社会問題となっている。
少子化をもたらしている要因には、次の3点が主なものとしてあげられている。その第1は、結婚年齢の上昇である。厚生労働省の人口動態統計によると、男女の平均初婚年齢は、昭和30年には男性26.6歳、女性23.8歳であったものが、平成12年にはそれぞれ28.8歳、27.0歳にま...