1 八幡製鉄政治献金事件(以下、八幡製鉄事件)と南九州税理士会事件において、まず共通して争点となっているのが、「法人の目的の範囲内の行為」がどこまで許されるか、ということであり、特に政治資金規正法上の政治団体への寄付行為が含まれるかが争われた。
これらのうち、まずは法人の目的の範囲について比較検討を進めていきたい。
八幡製鉄事件判決理由において、民法43条にいう「目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに含有されるものと解する」のを相当としている。そして、「必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であったかどうかをもってこれを決定すべきでなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断され」なければならないと、過去の判例を引用して述べている。
次に同判決理由は、会社について、地域社会の構成単位として自然人と等しく存在する、いわゆる法人の社会的実在説を採用した上で、営利法人である会社の活動重点が定款所定の目的を達成するうえに直接必要な行為だけでなく、一見定款所定の目的と関わりの無い行為であっても、社会通念上期待ないし要請されるような、例えば地域社会への奉仕や寄付行為なども、会社の当然になしうる行為であるとしている。
これらのことから、右判例は法人たる会社の社会的存在意義を重視し、民法43条の定款の目的の範囲を広く判断していると考えられる。
一方、南九州税理士会事件のおける判決理由も、民法上の法人のうち、特に会社については、民法43条の定款の目的の範囲を八幡製鉄政治献金事件判決と同様に判断してはいる。
憲法Ⅰ
「八幡製鉄政治献金事件判決と南九州税理士会事件判決を読み比べて」
1 八幡製鉄政治献金事件(以下、八幡製鉄事件)と南九州税理士会事件において、まず共通して争点となっているのが、「法人の目的の範囲内の行為」がどこまで許されるか、ということであり、特に政治資金規正法上の政治団体への寄付行為が含まれるかが争われた。
これらのうち、まずは法人の目的の範囲について比較検討を進めていきたい。
八幡製鉄事件判決理由において、民法43条にいう「目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに含有されるものと解する」のを相当としている。そして、「必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であったかどうかをもってこれを決定すべきでなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断され」なければならないと、過去の判例を引用して述べている。
次に同判決理由は、会社について、地域社会の構成単位として自然人と等しく存在する、いわゆる法人の社会的実在説を採用した上で、営利法人である会社の活動重点が定款所定の...