資料:2件
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会社法Ⅰ 代表取締役の代表権濫用
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会社法Ⅰ
代表取締役の代表権濫用
問題)甲株式会社の資産総額は1000億円であり、甲社の内規によれば、20置く円
以上の借り入れには取締役会の決議が必要であるとされている。甲会社の代表取
締役Aが甲会社を代表して乙銀行と以下の取引をした場合、それぞれの取引の効
果は甲社に及ぶか。
(1)Aは取締役会の決議を経ることなく設備投資のために40億円を借り入れた。
(2)Aは自己の株式投資に当てるために2億円を借り入れた。
1.総説
2.40億円の借り入れについて
①内規の対外的効力
②40億円の借り入れは商法260条2項の「多額の借財」にあたるか
③代表取締役の行為の効力
④検討
3.2億円の借り入れについて
1.本問は、本来、取締役会の決議を必要とする代表取締役の対外的代表行為について、
その決議を経ずに行為した場合、当該行為の効果が会社にも及ぶか否かが問題となる。重
要財産の処分(商法260条2項1号)や多額の借財(同2号)などの重要事項に関する
決定権は、代表取締役に一任することなく、株主総会で選任された取締役で構成される、
取締役会(業務執行に関する会社の意思を決定し、また、代表取締役の業務執行について
も監督する権限を有する)の決議をもってなされる(商法260条2項)。これによって、
代表取締役による権限濫用を防止し、会社利益を保護している。
(1)は①内規の対外的効力、②40億円の借り入れは商法260条2項の「多額の借財」
にあたるか、③代表取締役の行為の効力、(2)は、代表取締役の代表権濫用の問題である。
以下それぞれについて検討する。
2.40億円の借り入れについて
①内規とは、純粋に内部的な規律であり、商法261条3項は内規による制限をもって善
意の第三者には対抗できない旨規定している。
②Aが乙銀行から借り入れた40億円という金額は、甲社にとって商法260条2項2号
の「多額の借財」にあたるのかという問題について、判例は、その判断基準を次のように
示し、これらの事情を総合的に判断し決すべきものと述べた。
イ)当該財産の価額
ロ)その会社の総資産に占める割合
ハ)当該財産の保有目的
二)処分の態様
ホ)会社における従来の取り扱い
この事件においては、イ)7800万円、ロ)総資産総額47億8640万円の1.6%、
ハ)資本関係に基づく会社支配、二)通常取引に属さない、ホ)小額でも株式譲渡につい
ては取締役会がその可否を判断してきたという事実があった。この場合において、重要財
産の処分に属すると判断した。
本問についてみるに、イ)40億円、ロ)1000億円の4%、ハ)設備投資であるの
で、判例の総資産に占める割合1.6%を大きく上回る4%であるので、当該借り入れは、
商法260条2項2号の「多額の借財」にあたるというべきである。
③代表取締役の行為の効力
取締役会及び株主総会の決議を要する事項について、それらの決議を経ずに代表取締役
がした実務執行について、会社と取引の相手側が争った事件がある。ここでは、会社側は、
ⓐ株主総会の特別決議を経ていないこと、ⓑ取締役会の決議を経ていないこと、ⓒ代表取
締役の権利濫用であること、ⓓ相手方もまた必要な理事会決議を経ていないことを理由に
本件取引の無効を主張した。これに対し、相手側は、契約は有効であり、効果も有効に生
じると主張し、本件契約存在確認の請求をする反訴を提起したものである。
最高裁は、「代表取締役は、株式会社の業務に対し、一切の裁判上ま
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