背任罪と二重譲渡 【参考判例】最判昭和31年12月7日(百選?58事件)
一(1) XはAのために根抵当権を設定した不動産について、まだ登記がなされていないことをよいことに、Bに第一順位の根抵当権を設定し登記をしている。この点、Xは依然として当該不動産の所有権を失わないので、Xにとって当該不動産は「自己の占有する自己所有物」であるから、その行為が横領罪となることはない。しかし、民法373条によれば、Bに先順位が与えられることから、Aに生じた財産的損害との関係で背任罪の成否が問題となる。
(2) 本件について、はじめにAに対する背任罪(247条)の成否を検討し、次に、詐欺罪(246条)の成否を検討する。
二(1) 背任罪が成立するためには、?「他人のためにその事務を処理する者」(身分犯)が、?「第三者の利益を図りまたは本人に損害を加える目的」(目的犯)で、?「その任務に背く行為」(背任行為)をし、?「本人に財産上の損害を加えた」(損害の発生)ことが必要である。
(2) Xが?「他人のためにその事務を処理する者」の身分を有するか。まず、登記協力義務が性質上「事務」にあたることは問題ない。ただし、この義務はX自らの債務の履行でもあるので、「他人の」事務といえるのかが問題となる。
確かに、抵当権設定者の登記義務は一面で抵当権設定という自己の財産処分行為を完成させるものであり、その限りでは自己の事務という面もある。しかし、登記については共同申請主義が採られており、登記義務者の協力がなければ抵当権者が抵当権設定登記を完了し財産を保全することは不可能である。
背任罪と二重譲渡 【参考判例】最判昭和31年12月7日(百選Ⅱ58事件)
一(1) XはAのために根抵当権を設定した不動産について、まだ登記がなされていないことをよいことに、Bに第一順位の根抵当権を設定し登記をしている。この点、Xは依然として当該不動産の所有権を失わないので、Xにとって当該不動産は「自己の占有する自己所有物」であるから、その行為が横領罪となることはない。しかし、民法373条によれば、Bに先順位が与えられることから、Aに生じた財産的損害との関係で背任罪の成否が問題となる。
(2) 本件について、はじめにAに対する背任罪(247条)の成否を検討し、次に、詐欺罪(246条)の成否を検討する。
二(1) 背任罪が成立するためには、①「他人のためにその事務を処理する者」(身分犯)が、②「第三者の利益を図りまたは本人に損害を加える目的」(目的犯)で、③「その任務に背く行為」(背任行為)をし、④「本人に財産上の損害を加えた」(損害の発生)ことが必要である。
(2) Xが①「他人のためにその事務を処理する者」の身分を有するか。まず、登記協力義務が性質上「事務」にあたることは問題ない...