19世紀までにつくられてきた「個人の著者による包括的な音楽史」というものは、アウグスト・ヴィルヘルム・アンブロスの《音楽史》によって効果的に終わりを告げることとなる。アンブロス自身は17世紀の音楽史研究のみを手掛けただけではあるが、同僚によって残りの研究がなされたこの本において、彼の文化的なアプローチとより堅実な研究は、その時代に関する後の研究全ての基準を形成したのである。・・・基礎研究も巻ごとや章ごとに専門家が多数関わった、音楽史の共同制作による総合的な研究に見ることが出来る。重要なものとしては、W.H.ハドーが編集した≪オクスフォード音楽史 Oxford History of Music≫(全6巻、1901-05)やエルンスト・ビュッケンが創刊・監修した≪音楽学双書≫などが挙げられる。≪オクスフォード音楽史≫は一般的な観点及び方法において、イギリスのその分野での成熟を反映した。・・・一方で、音楽史全体についての書物の出版と合わせて、個人の著者による一般向けの著作が、読者対象を変えて徐々に書かれ始めた。その中でも独創的な研究と価値観を兼ね備えた概説誌としてはD.J.グラウトの≪西洋音楽史≫やP.H.ラングの≪西洋文明の中の音楽史≫などがある。
20世紀における音楽学史
19世紀までにつくられてきた「個人の著者による包括的な音楽史」というものは、アウグスト・ヴィルヘルム・アンブロスの《音楽史》によって効果的に終わりを告げることとなる。アンブロス自身は17世紀の音楽史研究のみを手掛けただけではあるが、同僚によって残りの研究がなされたこの本において、彼の文化的なアプローチとより堅実な研究は、その時代に関する後の研究全ての基準を形成したのである。
20世紀初頭から史料や論文などの方法論的研究と解明が進められ、各分野の研究が改めて十分に深く進められるようになった。新しい史料の発見や、史料批判の文献学的方法の確立を要望する声の高まりと共に、研究はますます細分化されていき、それに伴い専門分野の出版物が定期刊行物、学会報告、記念論文集などの形で刊行され始めた。
大学や研究機関に音楽学研究室を設置する動きも促進され、音楽史へのアプローチそのものが常に歴史の中に在るとの確信がこれまでになく浸透し、歴史的であるかどうかががアプローチの基本的な様式となった。
20世紀初頭に現れる複数の専門家の共同制作による研究は、音楽学の歴史編修法を明らかにした...