論語

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    『論語』は孔子(前五五一~四七九)の死後、彼の弟子らが孔子の言葉や行動、その弟子達らの問答を集録したものであるが、秦の始皇帝の焚書などによりありのままの形で残ってはいない。今伝えられているものは何種類かの伝承を集めたものである為、時代を経て様々な解釈が存在することになってしまっている。

     学而第一の、

      曾子曰 吾日三省吾身 為人謀而不忠乎。

      与朋友交而不信乎。 伝不習乎。

    においても様々な訳があるが、いくつかの訳を比較検討し、考察してみたい。

     まず「吾日三省吾身」の句であるが、この「三省」について、貝塚茂樹氏は「三回」、宇野哲人氏は「三箇条」、吉川幸次郎氏も「三つ」と特定の数を表している。宇野氏と吉川氏については、以下の「為人謀而不忠乎」「与朋友交而不信乎」「伝不習乎」の三つの事柄をと訳されているが、貝塚氏の三回に関しては、以下の句についてとは述べられておらず、何に関して「三回」なのかわかりづらい。漠然とした印象に受け止められる。

    またこのような限定した数字ではなく、吉田賢坑氏は「何度となく」、加地伸行氏は「何度も」と訳している。『新字源』によれば「三省」は「何度...

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