今回この『オイディプス王』を読んで、まず疑問を感じた箇所があった。
それは主人公オイディプス王達がなぜアポロンの神託に従ったのかという、ギリシャ神話、または哲学に無知な私らしい非常に素朴な疑問だった。今日、日本に無宗教に近い状態で占いもさほど信じない私にとっては、何故そこまでアポロンのお告げが重要であるのか不思議であった。
こうして古代ギリシャ人がどのような価値観を持っていたのか興味を持った。そして調べてゆくうちに、デルフォイの神託がギリシャ国家の運命だけでなく、人々の生き方までも決定してしまうほど絶対的なものであることを今更ながらに知ったのである。
考えてみれば、それはその後に起こるキリスト教を始めとする神を崇める宗教などと、時代は違えどなんの変りもないものであろう。
悲劇は、オイディプスの父ライオスが、自分の子供にかかって殺される運命にあるというアポロンの予言を聞いてしまったことである。そしてもう一つ、オイディプスが自ら父を殺し自らの母と結婚し子供までもうけてしまったという事実を知ってしまったことではないだろうか。
もしギリシャの神に限らず、王が神を頼らず自らの...