ノーマライゼーション概念の検討と共生概念との相違点
①ノーマライゼーションの提唱者の定義とその背景
ノーマライゼーションの概念は、ミケルセン、ニーリエ、ヴォルフェンスベルガーの3者によって代表される。3者に共通していえること、すなわち、ノーマライゼーションの概念に共通するのは、完全参加と平等という理念のもと、教育、労働をはじめ、あらゆる場面における「できるかぎり」「可能なかぎり」「最大限」の地域における統合をさしていることである。
概念の背景は、歴史的、社会的には国家独占資本主義段階における政策的理念であるといえる。つまり、北欧においては、社会民主主義的政策に吸収され、アメリカにおいては、社会改良策の延長上に導入され、イギリスにおいては、社会福祉の再編過程の中で展開されている。
②ノーマライゼーション類似概念の検討
☆リハビリテーション・・・障害者の総合的ないしは全面的権利の回復のための諸手段として体系化されている。諸手段とは、リハビリテーションの分野で展開される個別的援助のことである。医学的、教育的、社会・心理的、職業的リハビリテーションである。欧米では、基本的人権の復権が目指されるが、日本においては、医学的・職業的リハビリテーションが中心となっている。
☆インテグレーション・・・アメリカにおける視覚障害児教育での全盲児と一般児との同一場面における教育活動の中から発展してきた。日本では、統合教育として実践されている。さらに、医療、教育、労働、社会福祉の統合とその志向をいう場合もある。
☆メイン・ストリーミング・・・アメリカにおける特殊教育の主流が、出来る限り普通教育をという方向を明確にした一種の標語である。
☆インクルージョン・・・通常教育と障害児教育を統一したひとつのものとする学校教育システムを構築し、そのシステムの中で、障害児を「特別な教育ニーズ」を持つ児童としてとらえ、必要な教育的援助をもって対応すべきであるという考え方。
③ノーマライゼーションの日本における展開
わが国においてノーマライゼーション概念は、1981年に厚生白書において公式に紹介された。国際障害者年であるこの年に、正式に移入され、定着が目指されたのである。社会のあらゆる場面への完全参加と平等という国際的統一スローガンへの肉付け、ないし裏づけとして用いられるようになる。その後、1990年に、身体障害者福祉法の基本理念のなかで障害者は「更正」される存在から「自立」する存在へと位置づけが転換された。
一方で、わが国においては、ノーマライゼーション概念と障害者福祉の関係性があいまいなまま展開されている。以下の3点である。第1に、観念的障害者福祉論としての障害者福祉と同義語的な用い方がなされている。障害者福祉の重要な理念としてのノーマライゼーションである。第2に、技術論的障害者福祉論をより包括的に捉えたものとして用いられる。地域社会において統合される主体として障害者を位置づけ、その技術としてリハビリテーションを吸収していこうとする。第3に、発達保障論的障害者福祉論を補強するものとして用いられる。発達可能体として社会適応させていくことがノーマライゼーションの理念と内容に貢献する。この3点は、社会科学的認識に欠けており、障害者福祉=資本主義社会における生活問題という基本的構図から解放される。よって、ノーマライゼーションは、障害者福祉において、政策・運動の指針にはなりうるが、障害者福祉そのものにはなりえない。
ノーマライゼーションが示す具体的共
ノーマライゼーション概念の検討と共生概念との相違点
①ノーマライゼーションの提唱者の定義とその背景
ノーマライゼーションの概念は、ミケルセン、ニーリエ、ヴォルフェンスベルガーの3者によって代表される。3者に共通していえること、すなわち、ノーマライゼーションの概念に共通するのは、完全参加と平等という理念のもと、教育、労働をはじめ、あらゆる場面における「できるかぎり」「可能なかぎり」「最大限」の地域における統合をさしていることである。
概念の背景は、歴史的、社会的には国家独占資本主義段階における政策的理念であるといえる。つまり、北欧においては、社会民主主義的政策に吸収され、アメリカにおいては、社会改良策の延長上に導入され、イギリスにおいては、社会福祉の再編過程の中で展開されている。
②ノーマライゼーション類似概念の検討
☆リハビリテーション・・・障害者の総合的ないしは全面的権利の回復のための諸手段として体系化されている。諸手段とは、リハビリテーションの分野で展開される個別的援助のことである。医学的、教育的、社会・心理的、職業的リハビリテーション...