国家総動員体制と労働行政
国家総動員法の制定
厚生省設立後の労働行政の基本的課題は、戦争遂行のための労働力供給体制の確立である。各種の統制の中心となったのは、昭和13年制定の「国家総動員法」である。この法によって、労働・物資・貿易・企画・価格統制等々、経済活動のあらゆる分野にわたり人的・物的資源のすべてを戦争遂行のために動員する権限が政府に与えたれた。
職業紹介事業の国営化
わが国は、戦時体制下における重化学工業における膨大な労働力需要によって、著しい労働力不足に陥った。民間の労働力供給事業による旧来の労働力調達機構を改めることを目的に、昭和13年「職業紹介法」が改正される。市町村営の職業紹介所を国営にし、民営のものは許可制にされた。しかし、大きな成果はなく、次第に直接的な労働力調達方法がとられるようになる。
労働者の移動防止策と国民徴用令
労働力不足によって生じた労働力の移動により、賃金の高騰や適正配置を損なうといった問題が生じた。政府は、労働移動を防止しようと、昭和14年「国民徴用令」によって、不急産業の雇用を制限するなどの策を講じた。その後も、労働者の移動防止については、一...