現在の教育現場では、「パラダイム変換」が必要だと言われている。この「パラダイム変換」とは、一体何であろうか。また、どうして、パラダイム変換が必要なのであろう。まず、それを考察することにする。
「パラダイム(paradigm)」という用語は、1962年、T・クーン著『科学革命の構造』に展開されている科学と科学の歴史についての見方、科学論において提起された。パラダイムを「一般に認められた科学的業績で、一時期の間、専門家に対して問い方や答え方のモデルを与えるもの」と定義し、この語を自らの科学論のキーワードとし、「概念枠組み」や「モデル」、「概念形式」という科学論の歴史の中でいささか手垢のついてしまった用語を避けて、あえて馴染みの無い「パラダイム」という言葉を代わりに使ったのだが、この言葉は、それ以後の教育界でも大いに注目されることとなり、「新しい教育」の概念を示す意味として広く用いられるようになった。
教育工学研究における要素として「教師」、「学習者」、「人工物」の3つがある。「人工物」とは、教育システム、ツール、学習コース、教材などの教師と学習者を取り巻く学習環境のことを指しており、それぞれの要素に対する比重は、時代とともに変化してきたと考えられる。最初は、「教師から学習者へ」という部分が重視された教師の人格主義と言える時代であり、次に、人工物を利用して学習を促進する部分がクローズアップされた行動主義心理学の時代である。そして、学習者を中心とした学習コミュニティとその中での相互作用による教授学習における構成主義が主張された。
「構成主義(constructivism)」とは、ピアジェの発達研究をもとにした認識論のひとつであり、それまでの行動主義が、学習を受動的な過程と把握したのを批判的に考察し、学習を、「学習主体」が能動的に「環境」に働きかけ、それと相互作用することにより、学習者の頭の中の心的構造が変容することと捉え、学習における学習者の「能動性」それ自体を認めた。
現在の教育現場では、「パラダイム変換」が必要だと言われている。この「パラダイム変換」とは、一体何であろうか。また、どうして、パラダイム変換が必要なのであろう。まず、それを考察することにする。
「パラダイム(paradigm)」という用語は、1962年、T・クーン著『科学革命の構造』に展開されている科学と科学の歴史についての見方、科学論において提起された。パラダイムを「一般に認められた科学的業績で、一時期の間、専門家に対して問い方や答え方のモデルを与えるもの」と定義し、この語を自らの科学論のキーワードとし、「概念枠組み」や「モデル」、「概念形式」という科学論の歴史の中でいささか手垢のついてしまった用語を避けて、あえて馴染みの無い「パラダイム」という言葉を代わりに使ったのだが、この言葉は、それ以後の教育界でも大いに注目されることとなり、「新しい教育」の概念を示す意味として広く用いられるようになった。
教育工学研究における要素として「教師」、「学習者」、「人工物」の3つがある。「人工物」とは、教育システム、ツール、学習コース、教材などの教師と学習者を取り巻く学習環境のことを指しており、そ...