IBM社を対象にし、発足時の事業部制組織の形成から今日に至るまでの、一つの巨大企業の事業構造の展開と組織構造の改革のダイナミズムをたどろうと思う。
IBM社の歴史は、1911年当時、種類は違うが、広い意味で当時の情報処理機器の製造に携わっていた四つの企業、すなわちタイムレコーダと柱時計の製造企業としての International Time Recording Co. of New Yorkおよびその親会社であるBundy Manufacturing Co. of Binghamton、計量機製造企業としてのComputing Scale Co. of Americaそしてパンチカード式製表機製造企業としてのTabulating Machine Co以上四つの企業を統合する持株会社として、ニューヨークの有名な投資家フリントによって設立されていたComputing Tabulating Recording Co.(以下、略してCTR社)に始まる。CTR社は、1924年、International Business Machines Corporationと社名を改め今日に至っている。発足時から45年までの売上高を示すとこうである。CTR社は1911年発足時には、売上高400万ドル程度の小規模な企業であったが、10年後の1920年には1000万ドル台に乗るところまで成長を遂げた。20年代の売上高成長は、それほど急速なものではなかったが、着実な歩みを続け、30年代前半には売上高を2000万ドルに第乗せた。しかし、そのあとの売上高の成長は目覚ましく、長期不況の最中にもかかわらず、30年代前半から40年代前半にかけての10年間で約7倍の成長を遂げ、19444年には1億4000万ドルを超えることになった。