資料:7件
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文書偽造罪
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一 Xの罪責について。
1 XはすでにA大学の代表権を失っているにもかかわらず、「A大学理事長X」という名義の職印を押印の上、同人の署名を付し、売買契約書を作成した。そこで、Xの行為が有印私文書偽造罪(159条1項)にあたるかが問題となる。
この点、偽造とは作成権限を有しない者が他人の名義を冒用して文書を作成することであるところ、まず、当該文書の「A大学理事長X」という表示が他人名義の冒用といえるかを検討し、次に、当該偽造文書をもって売買契約の現場に臨んだことから、偽造私文書等行使罪(161条2項)が成立しないかを検討する。
2 まず、当該文書の「A大学理事長X」という表示が他人名義の冒用といえるか。そこで、当該文書の名義人を誰と解するかが問題となる。
この点、代理人と本人を一体とする「A代理人X」という人格が名義人であり、そのような人物は存在しないから(架空人名義の文書)、一般人がそのような名前の人物が存在すると誤信しうる範囲で偽造罪が成立するとする見解がある。
しかし、この見解によると、虚偽の肩書きを冒用する場合についてもことごとく偽造とされてしまい、有形偽造の範囲が広がりすぎる。
そこで、偽造罪の保護法益は文書に対する公共の信用であるから、名義人が誰であるかということは一般公衆が何を信用するかという点から判断するべきである。よって、文章に対する公共的信用は、文書の効果帰属主体である本人が実際に文書の内容どおりの意思・観念を有しているという点に向けられるから、本人を名義人と考えるべきである。
したがって、効果帰属主体である本人が名義人であり、代理名義を冒用する場合は有形偽造となると解する。
これを本問についてみると、当該契約書は、A名義の文書となり、Xの行為は他人名義を冒用するため有形偽造となる。
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刑法各論 文書偽造罪
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文書偽造の論点
一 Xの罪責について
論点
1.「A大学理事長X」という表示が他人名義の冒用といえるか。
↓(そこで)
当該文章の名義人を誰と解するかが問題となる。
↓(この点)<反対説>
代理人と本人を一体とする「A代理人X」という人格が名義人であり、そのような人物は存在しないから(架空人名義の文書)、一般人がそのような名前の人物が存在すると誤信しうる範囲で偽造罪が成立するとする見解がある。
↓(しかし)
架空人名義を想定するのは技巧的に過ぎる。
↓(そこで)
偽造罪の保護法益は文書に対する公共の信用であるから、名義人が誰であるかというところは一般人が何を信用するかという点から判断するべきである。
↓(この点)
代理名義の場合、効果が本人に帰属するものであるから、一般公衆も本人の文書として信用するといえる。
↓(よって)
名義人は本人であるあると解する。
二 Yの罪責について
論点
1.内容虚偽の写真コピーを写しとして使用する目的で作成する行為は偽造罪にあたるか。
→文書偽造罪にいう「文書」は原本でなければならないか。
2.改ざんした写真コピーが偽造か、または変造にあたるか。
3.コピーの作成名義人は誰か。
4.代理人名義を冒用した場合も「偽造」といえるか。(Xの罪責の論点参照)
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文書概念、名義人承諾と私文書偽造罪
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参考判例
最高裁平成6年11月29日第三小法廷決定(刑集48巻7号453頁、86事件)
最高裁昭和56年4月8日第二小法廷決定(刑集35巻3号57頁、94事件)
説例
暴走族のAは、中学生のときから度々自動車を無免許で運転していたことから運転技術にはたけていたものの、運転免許センターで実施される学科試験には数回受験したが合格できなかった。そこで、Aは、自分に似ているBが既に運転免許を取得しているのに目をつけて、平成16年9月初旬にBに対して替玉受験を依頼し、うまくパスしたら報酬として10万円を渡す約束をした。Bは、11月初旬になって依頼されたことを実行しようと思い立ち、変装して学科試験の会場に行き、マーク解答用紙の氏名欄にAの名前を書き、解答欄に正答をマークして提出した。しかし、試験中のBの挙動がおかしかったことから試験終了後に試験官がBを別室に連れて行ったところ、変装していることが発覚した。
一方、Aは、免許証が手元に届くまでの間、無免許運転で捕まるのはまずいと考えたが、10万円をアルバイトで稼ぐため、アルバイト先まで自動車で通うことにした。そこで、Aは、9月中旬ごろ、暴走族の仲間で運転免許証を持っているCに対して、「もし交通検問にあった場合には、お前の名前を貸してくれ。」と頼み込んだ。Cは、その時はじめてAが運転免許を持っていないことを知ったが、兄貴分的存在だったので、「なるべく捕まらないようにしてくださいよ。交通切符を切られるようなはめになったら、俺の生年月日や運転免許証の番号などをメモしておかないと、成りすましもできないよ。」と言って、近くのコンビニで免許証をコピーして手渡した。その後、Aは、無免許で運転を続けていたが、11月初旬ごろ、アルバイト先から帰宅する途中、交通検問にあい自動車免償の提示を求められたので、「免許証は自宅に忘れてきました。名前はCです。」と言って、Cに成りすまし、交通事件原票中の供述欄に「C」と署名し、交通切符を受け取り、数日後、郵便局で運転免許証不携帯による反則金を納入した。 A、B、Cの罪責について論ぜよ。
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