図書館情報学レポート

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    資料紹介

    『未来をつくる図書館』を読み、ニューヨーク公共図書館の多様なサービスやスケールの大きさを知り、今まで自分が抱いてきた日本の図書館像との落差に愕然とした。

    資料の原本内容

    図書館情報学レポート
    浦安図書館という存在
     『未来をつくる図書館』を読み、ニューヨーク公共図書館の多様なサービスやスケールの大きさを知り、今まで自分が抱いてきた日本の図書館像との落差に愕然とした。「理想的な図書館」をまさに具現化したようなニューヨーク公共図書館のことを知るにつれ、これくらい生き生きとした図書館が日本には全くないのだろうか、という疑問を持つようになった。そんな問いを抱きながら読み進めていると、最後のむすびの部分で千葉県浦安市立中央図書館について記述された箇所で、「日本の公共図書館で最も充実したサービスを行う図書館として知られている。」という一文に触れ、浦安図書館に強い関心を持つようになった。
    そこで私は、日本の公共図書館をリードする浦安図書館とはどんな図書館であるのかについて考察してみたい。
    基本に忠実な図書館経営
     私は『未来を作る図書館』を読むまで浦安図書館に関する情報を全く持ち合わせていなかったので、浦安図書館が最も充実したサービスを提供する図書館といわれるほどの図書館であるからには、他の図書館とは全く違う秘密があるに違いないと予想していた。しかし、実際には予想とは裏腹に「秘密」といえるほどのものがあるわけではなかった。浦安図書館が貸出冊数日本一などの大きな成果を収めてきたことについて、常世田(2003)は、「専門職の配置、市民の身近に施設を配置、資料費とう三つの要素を重視したことに尽きる。」と評している。
    実際に浦安図書館に入り、まず気づくこととして鈴木・坪井(2004)は、「一番のポイントは書棚の本が誰も手を触れていないようにきれいにそろっていることだ」と指摘している。そして、「午後でも閉館間際でも整然とした感じは変わらない。なぜだろうと疑問に思ってしばらく館員の動きを観察していると、時折、動き回って書棚の本を直しているのに気づいた。聞いてみるとこれは別に業務として指示があるのではなく、どの館員も自然にそうした動きをしているらしい。」と述べている。館員が本棚の整理をするのは当然のことかもしれないが、様々な業務に追われる中では、常に本棚を整然と保つのは中々難しいことなのかもしれない。他にも一般の図書館とは一味違う部分がある。それは「本の案内」カウンターである。一般の図書館でリクエストの受け付けをしているのはたいてい貸出カウンターだが、これでは混雑時にはリクエスト希望者が列に並ぶのをためらうのではないかという観点から、浦安図書館では貸出カウンターに「本の案内」カウンターが設けられている。レファレンスカウンターの手前に位置づけられる「本の案内」カウンターは、貸出カウンターではじっくり相談しにくいとういう状況を打開するための、非常に優しいシステムである。このように、館員が利用者、図書館、業務・・・それぞれに対する優しさを忘れずに、きわめて基本的な業務を忠実にこなしてきたことが、日本の公共図書館をリードする図書館となったゆえんなのだろう。
    浦安図書館の力
    鈴木・坪井(2004)がインタビューしている歴代の浦安図書館長、図書館開設に関わった建築家、浦安市長、浦安図書館の司書たちなどのことばからは、何ともいえない力強さが伝わってくる。一人一人が、浦安図書館の必要性や意義というものを深く意識し、強い自負を持っているような印象を受ける。日本一の公共図書館になってからも試行錯誤を繰り返してきた浦安図書館の原動力は、人々の力の結晶なのだと感じさせられる。図書館、市民、行政がそれぞれ考え方の違いこそあるが、浦安図書館をよりよい図書館にしていこうという情熱があふれているのが何ともすばらしい。
      
    参考文献
    常世田良 2003 勁草書房
    『浦安図書館にできること -図書館アイデンティティ-』
    鈴木康之、坪井賢一 2004 日本図書館協会
    『浦安図書館を支える人びと –図書館のアイデンティティを求めて-』

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