・Willa CatherとNebraska
CatherはVirginia州に生まれたが、10歳くらいのときにNebraska州に移住し、思春期までそこで暮らすことになる。当時のVirginiaは早くから開発された文化的な地方であったのに比べ、NebraskaのRed Cloudはまだ辺境の地で、ヨーロッパから入ってきたばかりの移民の多い大平原(Prairie)であった。ここで彼女は身の回りにいる開拓者たちのヒロイズム、勇敢さ、自然の美しさに感動を受けた。しかしその一方で辺境地域は知性に欠けた面を持っていたため、知的なものを求める若者たちにとっては不安感、孤独感、焦燥感を抱かせる場所でもあった。Catherはヨーロッパ移民たちの知り合いを通して音楽や文学などの文化に触れ、美の世界への憧れを抱いていた。
NebraskaのLincolnの大学に進学してからは、一流劇団の芝居を見ることができる環境に恵まれ、観劇に熱中していた。また、大学では科学ではなく文学を専攻し、芸術について深く考えるようになる。以後、長編小説を書くまでに多くの習作を40歳近くまで書いた点にも、芸術に対する情熱や献身が見られる。
2)作品紹介
・あらすじ
Pittsburghに住む高校生Paulは、美や芸術に対して異常に憧れが強い。Carnegie Hallで手伝いをしていた彼は、そこで芸術に触れることでロマンティックな空想に浸っている。それとは対照的な彼の住む町の質素さや学校の先生、父親を醜く退屈で耐え難いものとして嫌悪している。それらに反抗していたために、Paulは高校を退学させられて仕事につかされる。そこで彼は会社の金を横領してNew Yorkへ出て行く。高級な服を買い、高級ホテルに泊まり、それまで描いていた理想を実現させていく。数日後Paulは自分が犯した横領事件が新聞に取り上げられているのを見て、父親が自分を捜しにNew Yorkに来ていることを知る。つかまれば生活が今まで通りの醜いものとなることに絶望と恐怖を感じたPaulは事件を華麗に終わらせるべく、汽車に身をなげる。
Willa Cather
“Paul’s Case”
1)作者紹介
・Willa Cather (1873-1947) の生涯
1873年 12月7日 Virginia州Back Creek Valleyで生まれる
1883年 両親と共にNebraska州Webster Countyに移住する
1884年 Nebraska州Red Cloudに転居
1890年 Red Cloud High Schoolを卒業、Lincolnに行き、Univ. of Nebraska入学への準備を始める
1891年 3月 Thomas Carlyleに関する論文がNebraska State Journalに掲載される
9月 Univ. of Nebraskaに入学
1892-93年 Nebraska State Journalに寄稿を始める
1895年 Univ. of Nebraskaを卒業
1896年 PittsburghのHome Monthly誌の編集者になる
1897年 Pittsburgh Daily Leader紙の記者になる
1901年 記者を辞め、...