本稿では、外国為替市場における弱度効率的市場仮説の成立を検証する.弱度効率的市場仮説は、過去の変動から将来の変動を予測する事の可能性を否定するもので、将来の変動は現時点では観測不可能である要因によって決定されると主張する.本稿では、日米円ドル為替レートの過去の月次データ及び日米の政策金利差の月次データを説明変数とした線形回帰モデルを用いてこの仮説を検証するが、その結果、推定された回帰モデルの有意性は認められなかった.従って、弱度効率的市場仮説は成立し、過去の変動から将来の変動を予測する事が不可能であるという結論が得られた.また、説明変数として使用した日米金利差データの有意性も認められなかった事より、円ドル為替レートの変動に対して、日米の政策金利差は影響を及ぼさないという結論も得られた.
1 はじめに
Fama[1970]は、「市場が利用可能な全ての情報を正しく反映するとは、過去及び現在の情報を価格が全て正しく反映しているという事であり、将来起こりうる価格の変化は、現在入手する事の出来ない新しい情報によって引き起こされる事になる.新しい情報はランダムに発生すると考えられるので、市場が効率的であれば、価格変化もランダムにならなければならない.」と述べている.また、Malkiel[2003] は、「価格が十分に利用可能な情報を反映していれば、変動を予測する事は不可能であり、専門家もそうでない者も同等の収益率を得る事が可能である.」と述べている.このように、利用可能な情報を全て用いたとしても、将来の変動予測を行う事が出来ないならば、市場は効率的であると言われる.市場が効率的であると主張する効率的市場仮説の一つである弱度効率的市場仮説は、金融市場における過去の変動から、将来の変動を予測する事が不可能という事を指し、本稿の目的は、この弱度効率的市場仮説を検証する事である.
外国為替市場における弱度効率的市場仮説の検証
概要
本稿では、外国為替市場における弱度効率的市場仮説の成立を検証する.弱度効率的市場仮説は、過去の
変動から将来の変動を予測する事の可能性を否定するもので、将来の変動は現時点では観測不可能である要
因によって決定されると主張する.本稿では、日米円ドル為替レートの過去の月次データ及び日米の政策金
利差の月次データを説明変数とした線形回帰モデルを用いてこの仮説を検証するが、その結果、推定された
回帰モデルの有意性は認められなかった.従って、弱度効率的市場仮説は成立し、過去の変動から将来の変
動を予測する事が不可能であるという結論が得られた.また、説明変数として使用した日米金利差データの
有意性も認められなかった事より、円ドル為替レートの変動に対して、日米の政策金利差は影響を及ぼさな
いという結論も得られた.
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1 はじめに
Fama[1970]は、「市場が利用可能な全ての情報を正しく反映するとは、過去及び現在の情報を価格が全て
正しく反映しているという事であり、将来起こりうる価格の変化は、現在入手する事の出来ない新しい情報に
よって引き起こ...