はじめに
人は、多種多様な情報を活用しながら日常生活を送っている。情報を得てすぐに利用する場合もあるし、ある程度の時間その情報をおぼえておいて、後の行動に役立てるという場合もある。後者の場合、一般的な意味での記憶の必要とされる状況だといえる。記憶に関しては、必要な情報であっても全てをおぼえておけなかったり、ある物事は思い出せるのにそれに似た他のことは思い出せなかったりするという現象を、多くの人が日常的に体験していることだろう。
今回の実験では、こうした記憶の特性のひとつを実験的に検証するものである。具体的には、複数の同じような項目をおぼえた場合に、思い出しやすいものと思い出しにくいものがあるという現象をとりあげる。この現象を引き起こすひとつの要因について、その特性を調べることが、今回の実験目的である。
実験
被験者 心理学実験の授業内で京都府立大学学生の男女24人が被験者となった。
装置 Microsoft PowerPointによって刺激を24教室のスクリーン上に提示した。
刺激 実験で用いる刺激は、白色のスクリーン上に黒色の文字で提示された。刺激となった単語は、漢字2文字の熟語120語であり、これがランダムに8つのセットに分けられた。これらの単語は、小川・稲村(1974)をもとに、学習容易性が3.97〜5.03(平均4.53)の範囲になるように統制されていた。また、遅延時間中のディストラクタ課題である減算課題には、ランダムに生成された3桁の数字を使用した。
手続き 実験条件は直後再生と遅延再生の2条件であった。
遅延再生では以下の手続きで課題をおこなった。まず、スクリーン上に、各項目2秒の割合(項目提示時間1秒、項目間間隔1秒)で1つずつ単語が計15項目提示され、被験者は、それを観ておぼえておくように指示された。これに引き続き、3桁の数字が各項目3秒の割合(項目提示時間2秒、項目間間隔1秒)で1つずつ計10項目提示された。これを終えた後、今度は先に提示された単語を思い出した、60秒間のうちに手元の再生用紙に解答するように指示された。その際、提示された順序に関わりなく、想起した順に自由に筆記再生するように求められた。
これらの手続きをもって1試行とし、全部で4試行を実施した。
また、直後再生における手続きは、数字の減算課題が挿入されないことを除き、遅延再生の場合と同様であった。直後再生条件も全部で4試行をおこなった。
結果
直後再生、遅延再生ともに1番目〜15番目までの単語の生再生率を求めた。そして24人分のデータの平均値をそれぞれ求め図1図2に示した。
直後再生は、1番目の単語の生再生率は約80%、2番目は約65%であった。3番目からは急激に低下し、3番目〜11番目は20%〜40%の間であった。12番目〜14番目は40%〜60%の間であり、だんだんと上昇していっているのがわかった。また、15番目はさらに上昇し、1番目とほとんど同じ値の約80%であった。遅延再生は、1番目、2番目の値がともに高く約80%であり、3番目は急激に低下し、4番目が比較的高いことを除けば、3番目から11番目は20%〜40%の間であった。また、直後再生と遅延再生を比べると、1番目、2番目、3番目は同じような数値を示しているが、4番目から8番目までは、6番目が同じ数値であることを除けば、遅延再生の方が再生率は高い。13番目からはともに再生率は上昇し、15番目になると直後再生は80%、遅延再生は40%と両者に差がついた結果であった。
次に直後再生、遅延再生の中
はじめに
人は、多種多様な情報を活用しながら日常生活を送っている。情報を得てすぐに利用する場合もあるし、ある程度の時間その情報をおぼえておいて、後の行動に役立てるという場合もある。後者の場合、一般的な意味での記憶の必要とされる状況だといえる。記憶に関しては、必要な情報であっても全てをおぼえておけなかったり、ある物事は思い出せるのにそれに似た他のことは思い出せなかったりするという現象を、多くの人が日常的に体験していることだろう。
今回の実験では、こうした記憶の特性のひとつを実験的に検証するものである。具体的には、複数の同じような項目をおぼえた場合に、思い出しやすいものと思い出しにくいものがあるという現象をとりあげる。この現象を引き起こすひとつの要因について、その特性を調べることが、今回の実験目的である。
実験
被験者 心理学実験の授業内で京都府立大学学生の男女24人が被験者となった。
装置 Microsoft PowerPointによって刺激を24教室のスクリーン上に提示した。
刺激 実験で用いる刺激は、白色のスクリーン上に黒色の文字で提示された。刺激となった単語は、漢字2文字の熟語...
分かりやすく、見やすかったので良かったです。